『Hell side 2-2 ナイスガイ』
『Hell side 2-2 ナイスガイ』
開いたエレベーターの扉越し、スマホ縦画面の画角から「あ、はじめまして、内菅井 力士と申します」と少し間伸びした、語尾のアクセントが下がるもっさりした口調で裸絞キメたまま笑顔の警備員から三弥栄は挨拶をされる。
「みんなから、ナイスガイと言われてます。その方が呼びやすいって」呼び易いニックネームまで付け加えて自己紹介してくれたが、三弥栄は声を出せず動けないでいる。ビビっている。
所長に肩を押されて2人でエレベーターから降りると、エレベーターの扉が閉まって消えた。扉が見えなくなって消えたのである。
三弥栄は何が起きているのかを見失い、混乱して半べそを我慢している。ひょっとしたら死ぬと思っている。
そして、2人の到着を確認したナイスガイは、笑顔で裸絞キメた首を捻り回して首頚椎を破壊した。
破壊されたそれは崩れて蒸発するように粒立ち消えて無くなった。
「だいろくてんまおって言ってたから、多分真央ちゃんだ。6点台に納得行かなかったんだろう。とても強い怨念だった。安らぎを取り戻して欲しい」ナイスガイはそう言って十字を切る。
真央ちゃん…ナイスガイは何と戦っていたのだろうか……。
絞めていたのは髭面面長のおっさんに見えたが……。
第六天魔王の頚椎を破壊したのではなかろうか……。
「いまの見た?」
所長が三弥栄に確認する。
「これが力」
言って所長がドヤった。
この後、施設管理部行くからと言って所長はエレベーターの起動を無線で依頼して呼び出し、所長、三弥栄、ナイスガイはまた現れたエレベーターへ普通に乗ってOK牧場と呼ばれるそこを離れた。
ナイスガイは片足跳びでケンケン移動している。よく見ると片足の脛が折れていてプルンプルンしており、移動中苦悶して、口からはヨダレが垂れている。戦いの高揚は終わり、笑顔の後、負傷による苦痛に襲われているようだ。
「力」とは、あんな感じの何かと、重症を負いながらガチで戦うための実力としての「力」。地獄落ち回避の除霊グッズ買わされることではなかった。片足プルンプルンは、それよりも酷い有り様である。
もう1つ、三弥栄が気になっているのは、所長が無いと言っていた施設管理部へ向かっていることである。