『Hell side 3-5 ドラゴンへの道』
『Hell side 3-5 ドラゴンへの道』
メリア 地下1階 防災保安室。
「初めまして。この施設の保安部長、智川 虎太郎です。龍美の兄です。いつも妹がお世話になっております」
「初めましてこちらこそ、龍美さんにはいつもお世話になっております。ハリー堀田と申します」
互いに挨拶を交わす。
智川 虎太郎(30)メリア保安部長、兼ゼロケイ「第一部隊隊長」、龍美の兄である。彼も勿論、何かしらのアイテムを所持している。
メリアの保安課は制服ではなく、礼服で任務に当たっているようだ。室内はブラックフォーマルで統一されている。
OSは互いに自分側を「第一部隊」として、もう一方を「第二部隊」としている。共闘の場合、「智川隊」「久慈隊」と呼び区別する。
ゼロケイは組織やら呼び名、目的、成り立ちこそ同じであるが、互いにゼロ界でのみ遭遇する、他で交わりようのない世界。そもそも、第一も第二も無く、それぞれが独立した部隊である。
14時に行われるアイテム取得任務「地獄へ道連れ」に関して、ハリー堀田は龍美と一緒に特務ELVで0階からゼロ界へ侵入してその世界観を説明する。
ゼロ界「CTフィールド」
OSではここを「OK牧場」と呼ばない。誰が付けたか起源は不明だが「OK牧場」とは呼ばない。「CTフィールド」と呼んでいる。
ハリーはELVを降りた先が広い平野であることに驚いている。龍美がハリーを落ち着かせながら状況の説明を丁寧に行っていく。時間は4時間しかない。
問題はハリーが学生であること。
そして、アイテムの未回収は先走った魂の消滅となる。これは魂のバランスを欠く呪い。人それぞれに違いはあるが、その後の人生によろしくない効果があると言うこと。例えば、いや、全て「Die Young」これまでの最短は3日後。長くても1年以内に転生するはめになる。
三弥栄の時は彼が中年に差し掛かった男性であることから、自身の覚悟さえあれば、地獄へ道連れされようが、未回収で呪われて「Die Young転生」しようがお構い無しだったが、ハリー堀田は違う。
彼女を単純に地獄へ道連れへ放り込むって訳にいかない。
そして訪れる異変。
何かが龍美とハリーの方へ近づいてくる。
CTフィールドで遭遇するのは、第二部隊か「CT」しかない。近づいてくるのは……どうやら後者「CT」だ。
黄色い体に赤いTシャツだけを着た熊。
Tシャツには
「熊即斬」
「熊に人権を」
と書かれている。
生まれたての「CT」に間違いない。
見た目の「愛くるしさ」とTシャツにエンコードされた矛盾する言葉の主張。責任を持たない者の意識が、無責任に発した言葉同士、暴走連結して兆候した初期段階。
「え、まって、クマのPさんー!!超可愛い」
近づこうとするハリー。
「え、まって、さっき説明したじゃん、ハリーちゃんダメ」と言って龍美がハリーの腕を掴んで止める。
「あれが、説明したCTね。暴走した意識の連結。人里に降りてくる熊への対応で対立する暴走意識が蠢いている。熊問題のCT、熊問」腕を掴んだ龍美がハリーへ説明する。
「く、熊問」
ハリーは「Pさん」ではないと思い知る。
どちらが正しいではない。無責任な意識と言葉の「対立」が集合無意識下で塊となって現実へ溢れるのを防ぐ。
「で、これが私のアイテム」龍美はそう言って、左腕に巻かれた、龍の形をした銀のバングルをハリーに見せる。
「悪いけど、この場合(CTの場合)、熊即斬なんだわ。見てて」龍美はそう言って左てを前に出す。
「龍身!!」
巻かれたバングルが動き出した。伸ばした手の中指から上腕へと龍が真っ直ぐに伸びる。
「行け、ドラミちゃん」
龍美の左腕が「ドラゴン」と成って、熊問に襲い掛かる。
頭から喰らい付き、ガブガブと咀嚼して食べてゆく。
食い尽くして最後、炎を吐いた。熊問はドラミのゲップと溶けた。
ハリーが泣いている。
龍美の腕が喰らう愛らしい物体、その一部始終を見て、自分が得体の知れない何かに巻き込まれていることを肌で感じ、恐怖している。
「やばい、やりすぎた」
龍美は立ち尽くす。




