『Hell side 3-1 モロる』
『Hell side 3-1 モロる』
静脈にワンショットで鎮静剤を投与され、三弥栄はヘベレケだ。ストレッチャーで死節管理部前へ運ばれ、テープで目、口、耳を塞がれる。素早く宇宙服に密閉封印された。モーターレースのピットインが如し。所長、ナイスガイ、H2Bの連携。三弥栄の意識は無くなっている。
ストレッチャーに力なく横たわる宇宙服の三弥栄。
所長は扉に鍵を差し込み待機する。
13時00分「地獄へ道づれ」実施。
所長が鍵を開けて扉を開く。
ナイスガイとH2Bがストレッチャーを室内に押し込む。
所長が扉を閉めて鍵を掛ける。
13時45分
死節管理部の扉が内側から鍵が開き、横引きに開いた。奥から無人のストレッチャーがカラカラとゆっくり姿を表した。それを掴んで押し、支えにしながら、ヘロヘロの三弥栄が出てきた。まだ薬が効いているようだ。
ストレッチャーの上には畳まれた宇宙服と「本」が置いてある。
「モ、モロりまひた...」
三弥栄は呂律が定まらないまま、扉前に待機していたナイスガイへ報告する。鎮静剤が濃い目だったようだ。
三弥栄 文楽、地獄へ道づれ、完遂。
──── 遡ること35分
13時10分「死後の世界」に着いた三弥栄。
三弥栄はストレッチャーの上、頬をペチペチ叩かれる。
「起きて下さい、起きて下さーい、三弥栄さん、わかりますかー、起きて下さーい」
三弥栄は目を開ける。
目の前にぼんやりと女性がいて、頷く三弥栄の手を取り、他何人かの作業で車椅子に乗せられる。既に宇宙服は着ていない。
連れられた先、部屋の中、キラキラ輝く透明で美しいシャボン玉のような球体に包まれて「本」がフワフワと浮いている。
「三弥栄さん、わかります?あれ、あのシャボン玉みたいなのを手に取って下さい」
女性はそう言って三弥栄を浮かぶ球体へと車椅子ごと近付ける。
近づくと、球体はゆっくりと三弥栄へと寄って、車椅子の膝の上、三弥栄の手に触れて割れた。一冊の本が残った。
「状態安定した」
女性はそう言って三弥栄に「このまま30分、安静にしていて下さい。もう少し意識がはっきりしたら、戻ってもらいます」と伝える。
三弥栄は再び意識を失った。
13時40分
「三弥栄さーん、どうですかー、わかりますかー」
三弥栄は女性からの呼びかけに目を覚ます。
目の前の女性は智川。智川がいる。最初から智川が対応していたのだが、先程よりも意識がはっきりしてきて改めて気がついた。
「モルカーさん(智川さん)...あーた、トルシエさん(智川さん)」
三弥栄が智川を知ってると伝えるが呂律が安定しない。
「そうです。私が智川です」
智川に伝わった。気が合いそうだと三弥栄は思う。
智川が続ける。
「来ていただいてありがとうございます。あなたの魂は安定してこの形(本)になりました。これを持ち帰り下さい。安定したと言っても、ここはあなたからすれば死後の世界。長くは留まれません。先走った魂が安定したので、魂本体の危険は無くなりました。このまま部屋に入って、向こう側の扉を開ければ安全に戻れます」
智川が三弥栄へ状況を共有する。
三弥栄は地獄へ道づれの最中の記憶がまるでない。気がついたらこうなっていた。このまま帰るのも名残惜しいが、慌ただしく状況に流されて行く。
三弥栄はこちら側(智川世界)の死節管理部前に連れて来られる。
ストレッチャーに本を置くよう指示され、宇宙服のそばに並べて置いた。
「ストレッチャーを押して部屋に入って下さい。扉が閉じたら反対側の扉を開くことができます。ご自身で鍵を開けて扉を開き、またストレッチャーを押して外へ出て下さい」
帰りは扉の開け閉めだけで良いようだ。記憶もなく意識も覚束無いので言われるがままにするしかない。
智川に「気をつけて、次はCTフィールドで会いましょう」と言われて背中を押されて部屋に入れられた。
そして13時45分
三弥栄は「モ、モロりまひた...」と帰還を報告する。




