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過去と今

火星のノテルに到着した輸送機から降りたアリシアとケインは、火星政府軍から支給された軍服に着替えた。灰色の戦闘服と防弾ベストは、ヴェルトでの戦争を思い起こさせる重さだった。アリシアはAK-47を手に握り、ケインはライフルを肩に担いだ。二人は政府軍の小隊に組み込まれ、ノテルの工業地帯へと向かった。


街は戦場と化していた。「ノテル・コミューン」を名乗る労働者軍がバリケードを築き、武器を手にした10万近い人々が叫び声を上げていた。煙と銃声が響き、火星の赤い空が灰色に染まっていた。アリシアとケインは小隊と共に市街戦に突入し、久しぶりの戦闘に息を整えた。


「ケイン、右の路地に隠れろ!敵がこっち来てる!」 アリシアが叫び、倒壊した建物の陰に身を潜めた。ケインも素早く彼女の隣に滑り込み、二人で壁に背を付けた。労働者軍の足音が近づき、アリシアはAK-47を構えて息を殺した。


「ヴェルト以来だな…こんな戦い。」 ケインは小声で呟き、ライフルを握り直した。


労働者軍の一団が路地に現れ、アリシアが素早く銃口を向け、引き金を引いた。銃声が響き、数人が倒れたが、敵の反撃が即座に飛んできた。ケインも応戦し、弾丸が壁を削った。二人は息を顰めながら撃ち合い、敵の数を減らした。


「まだ来る…!隠れる場所変えるぞ!」 アリシアが指示し、二人は廃墟の奥へ移動した。


労働者軍から身を隠すため、二人は壊れた倉庫の影に潜んだ。銃声が遠ざかり、一時的な静寂が訪れた。アリシアは膝をつき、荒い息を吐きながらケインを見た。


「なあ、ケイン…この状況、俺たちが会った時と似てるな。あの時も、こんな廃墟で隠れてさ。」


ケインは彼女の言葉に目を細め、ヴェルトでの出会いを思い出した。敵同士だった二人が、戦場で偶然顔を合わせ、生き延びるために手を組んだあの瞬間。


「そうだな。あの時、お前が銃持って睨んできたの、今でも覚えてるよ。でもさ…」 ケインは笑い、彼女の肩に手を置いた。「俺たち、二人なら無敵だろ。ヴェルトも乗り越えたんだ。今度も大丈夫だ。」


アリシアはケインの言葉に小さく笑い、頷いた。


「お前がそう言うなら、信じるよ。二人なら…なんでもできるよな。」


その瞬間、倉庫の外で足音が響き、二人の会話が途切れた。労働者軍の一隊が近づき、廃墟の隙間から二人の姿を見つけた。


「おい、あそこだ!政府の犬だぞ!」 労働者が叫び、銃を構えた。


アリシアとケインは咄嗟に身を低くしたが、敵の数が多く、逃げ場がなかった。弾丸が飛び交い、ケインの肩をかすめ、アリシアの足元に着弾した。二人は死を覚悟したその時、別の方向から鋭い銃声が響いた。労働者軍の数人が倒れ、混乱が広がった。


「こっち、早く!」女の声が聞こえ、アリシアとケインが顔を上げると、政府軍の服を着た同い年ぐらいの女兵士が立っていた。

名前を聞く余裕もなかった。とにかく、ここから命からがら脱出し命拾いした。

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