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星々の煌めき

ヴェルトの中立地域を後にし、アリシアとケインは『アースポート』に到着していた。広大な宇宙ステーションのドックには、火星や他の惑星へ向かう宇宙船が並び、移住者や労働者で賑わっていた。二人はハーランド少佐の支援で手に入れたチケットを握り、火星行きの宇宙船「ヘラス・パイオニア号」の搭乗ゲートに並んだ。


「これが俺たちの船か…でかいな。」 ケインは船の流線型の船体を見上げ、感嘆の声を上げた。


「当たり前だろ、火星まで行くんだから。私、ちょっと緊張してきた。」 アリシアはバックパックを背負い直し、ケインの腕をつついた。


搭乗手続きを終え、二人は船内の客室に案内された。狭いながらも清潔な部屋には小さな窓があり、宇宙の暗闇と『アースポート』の光が見えた。アナウンスが流れ、乗客たちは席に着いた。


「まもなく『ヘラス・パイオニア号』は火星ヘラス海沿岸に向けて出発します。安全な旅をお楽しみください。」


エンジンの低いうなり声が響き、船がゆっくりとドックを離れた。アリシアは窓に顔を寄せ、遠ざかる『アースポート』を眺めた。


「ヴェルトともう会えないんだな。でも、火星で新しい生活だ。」


「ああ。お前と一緒なら、どこでもやっていけるよ。」 ケインは笑って、彼女の肩を軽く叩いた。


船が太陽系外縁に向け加速を始めると、二人は窓の外に広がる星々を見ながら穏やかな時間を過ごした。しかし、その平穏は突然終わりを迎えた。船内が一瞬揺れ、警告音が鳴り響いた。アリシアが驚いてケインを見ると、彼も目を丸くしていた。


制御室では、乗組員が慌ただしく動き回っていた。モニターに映るデータが異常を示し、司令官が叫んだ。


「何だ、このエネルギー波は!?全センサーを作動させろ!」


「報告します!近くの恒星系で超新星爆発が発生!衝撃波がこちらに向かってます!」 操縦士の声が震えていた。


司令部では、状況を把握したスタッフが混乱に陥っていた。通信機から怒号が飛び交い、指令が錯綜した。


「衝撃波の規模が予想外だ!回避は間に合わないぞ!」


「エンジンを最大出力にしろ!耐えられるか分からんが、やるしかない!」


船内にアナウンスが流れ、乗客たちに衝撃に備えるよう指示が出された。アリシアとケインは互いの手を握り、座席に体を固定した。次の瞬間、船体が激しく揺れ、窓の外に眩い光が広がった。超新星爆発の衝撃波が「ヘラス・パイオニア号」を直撃し、船内が暗闇に包まれた。


制御室では、モニターが異常値を表示し、警告ランプが点滅していた。操縦士が叫んだ。


「メインエンジンが反応しない!衝撃波で出力が落ちてる!」


「予備エンジンに切り替えろ!このままじゃ漂流するぞ!」 司令官が指示したが、状況は悪化する一方だった。


数分後、轟音と共に船体が再び揺れ、エンジンルームから火花が散った。緊急通信が司令部に届いた。


「『ヘラス・パイオニア号』より司令部へ。メインおよび予備エンジンが故障。制御不能。救助を要請する。」


アリシアはケインの手を強く握り、恐怖に震えた。


「ケイン…どうなるの、私たち?」


「分からない。でも、生きてる限りなんとかなるさ。お前と一緒なら大丈夫だ。」 ケインは強がって笑ったが、彼の声もわずかに震えていた。


船は衝撃波の影響で航路を外れ、宇宙を漂い始めた。数時間後、近くを航行していた連邦の曳航船が「ヘラス・パイオニア号」を発見し、救出作業が始まった。だが、火星への到達は不可能となり、船は近くの地球型惑星「エリダヌスⅡ」に曳航されることになった。


船がエリダヌスⅡの大気圏に突入し、窓の外に緑と青の風景が広がった。アリシアとケインは疲れ果てた顔でその光景を見つめた。船が着陸すると、アナウンスが流れた。


「お客様にお知らせします。当船は予定を変更し、エリダヌスⅡに緊急着陸しました。今後の対応については追ってお知らせします。」


二人は互いを見合い、肩の力を抜いた。アリシアが小さく笑った。


「火星じゃなくて、別の星か。まあ、お前と一緒ならどこでもいいや。」


「そうだな。とりあえず生きてる。それで十分だ。」 ケインも笑い返した。


窓の外には、エリダヌスⅡの未知の大地が広がっていた。火星への夢は砕けたが、二人の旅は新たな星で続いていた。

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