9【改めて申込み】
本来なら、ディアナ国王の夏季休暇が終わって、王城に戻ってから、正式な謁見の後結婚を申し込む段取りなのだが、ハルキア国王とフェルゼン殿下かからの連名で、手紙が届き、二人そろって避暑地の別荘に来るという事だったので、お父様はしぶしぶそれを受け入れた。
そもそも、ディアナ国に比べれば、ハルキア国の方が歴史があって国土も広いので、受け入れるしかなかったのだ。そして、国としての立場的にも上位のハルキア国王の王の方が来るという事もあり得ないのだ。逆に言えばそれほどあちらも真剣な事案と言うことが示されたという事でもあった。
私たちは別荘の玄関で、ハルキア国一行をお出迎えした。
ガーデンパーティの後すぐにお母様が王城から届けさせた、夏もので一番上級のドレスを着せられて、まだ八歳なのに軽くコルセットもされていた。苦しい。
ハルキア国の紋章が入ったキラキラした馬車がディアナ王家の別荘の前に止まった時は、周りの民衆も群がって見ていた。それを警備隊が必死で警護に当たっていた。とくに王と王子は見目が良いことでも人気だったので、女性が多かった。
ピソーラ陛下とフェルゼン殿下は今日は二人とも手袋はしていないが、王族らしい準軍服にマント姿でやってきた。
別荘なので城に比べると部屋は少ないが、それでも涼しい湖に面する一番大きな部屋にお迎えした。
上座に一人ずつの椅子に並んで座ったピソーラ王とフェルゼン殿下は終始にこやかだった。
私はお父様とお母様に守るように間に挟まれて座っていた。
ピソーラ王とお父様は、国の元首同志なので国際的な集まりなどでは、何度も会っていたそうで、軽く再開の挨拶をしていた。
そして、少し緊張した顔のフェルゼン殿下は立ち上がると
「初めまして、ディアナ国王陛下。フェルゼン ハルキアと申します。
この度突然のことと驚かれている事でしょうが、単刀直入に申し上げます」
「申して見よ」
「俺は、この世に生まれる前から、豊子いや、マリー ディアナ王女殿下を愛しております。どうか、改めて婚約の申し込み及び将来の結婚についてご許可をお願いいたします。マリー王女殿下を俺にください」
そうして九十度に腰を曲げてお辞儀をしてきた。手は横に。
あちゃー。それは日本人式のお願いだ・・・だからマントがだらんとした。
しかし、続いてピソーラ王も立ち上がり、口を開く。
「私からもお願いする。どうか、母さんいや、マリー王女をわたしの娘に迎え入れることをお許しいただきたい」
とやはり九十度のお辞儀をしてきた。
健一が私の両親に結婚の申し込みをした時のことがちょっとフラッシュバックして感動してたのに、太一まで同じなんて。胸がいっぱいになるに決まってるわ。
私は静かに涙を流しながら、隣で座るお父様を見つめる。
「私は、この自分の王后にこれほど情熱的な申し込みをしただろうか」
そう言いながら、お母様の方を少し見ると
「覚えてないぐらいのあっさりしたものだったわ」
そのお母様の言葉を聞いてお父様も立ち上がると
お母様も私も続いて立ち上がる。
「わかりました。お申し込みを受け入れましょう。
先日、フェルゼン殿下とマリーの前世の馴れ初めを教えてもらったのです。そんな二人の縁を離すことなんて、私には到底できません。
しかし、我々にも、彼女は本当に大切な王女である以前に大事な娘なのです。
くれぐれも、幸せになるようお願いしたい」
「「もちろんです」」
親子のタイミングはばっちりだわ。
そしてお父様は、ピソーラ王とフェルゼン殿下と順番に握手を交わす。
「とりあえずは、こちらでもう少し教育と、学園への入学と卒業ですね。それまでは節度を守ってですよ」
ちょっと、お母様。たしかに大人だった経験はあるけど、今は八歳なのよ。なにをいうのかしら!
顔が熱いわ。
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