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竜人の迎え方 2

 ーーーしかし、どうして俺が理解するのはいつも最後なんだろう?……


 「タクトはの、それだけみんなに大事にされとるんじゃて」


 「そうかぁ?だったらもうちょい関わりたいんだけど……」


 「だからこうやって関わっているだろ?……みんなを頼るのも慣れた方がいい。今だって、タクトの名前を出せば志願者が殺到しているくらいなんだ」


 俺が先程つい思った愚痴を呟くと、意外にフォローをしてくれるガロ爺と、俺よりも周りをみているエランが補足してくれる。


 「俺っちの立場も今でも殺到しているっすよ?」


 そういうクーパーも一番の敵はピオールっす、と何気なく教えてくれた。俺達の横で待機しているフォーも参戦してきたが……


 「私の立場を脅かす者は私を超えて頂かないと」


 にっこりと笑いながら言うフォーを見て、俺はそんな奴いないだろ、と心の中でツッコミを入れながらお茶を飲む。


 「私達だってこの位置はキープしますよ!」


 「来たって、蹴散らしてやりますよ」


 ラスタとチェックも聞いていたらしい。


 ラスタはかかって来なさい!とやる気を見せているし、チェックは二の腕をポンポン叩いてニヤリとしている。


 (……そっか、この世界の人達にとって、万様に属する事は栄誉なんだよなぁ。当然、俺の周りはスペシャリストが集まるわけで……)


 「……贅沢言ってたんだなぁ、俺」


 なんとなくのけ者感があったのだが、それが逆に敬われていたが故とわかり、頬をぽりぽりしながら皆に笑いかける。


 すると、気にするなと言わんばかりに、ラスタが胸を叩く。


 「私達がタクト様や万物様の役に立ちたいだけなんです!任せてくださっていいんですって」


 「そうそう。ラスタがミスったところは俺が補いますしね。おら、ラスタ。出番だぞ」


 「ありゃ、チェックありがと!」


 そう言ってスクリーンに向かって準備するラスタ。


 促されるようにスクリーンに目を向けると、既に竜人達がフォレスト空港ターミナルビル入り口まで辿りついたところだったーーー






 竜人サイドー兵士視点ー


 (凄え……)


 俺達が想像していたものとは全く違ったフォレストドワーフの街。


 苔に覆われていても、立派な大理石の建物。そこから発せられている緑のドームは、この光景を更に神秘的な雰囲気にさせていた。


 「これが緑のドーム……!」


 「噂とは大違いじゃねえか……!」


 「なんて清涼感だ……!」


 周りにいる兵士達が口々に呟くが、正直、俺達が竜人とはいえ桁違いの力を感じる。


 (……俺だけか?怯んでいるのは……?)


 そう思っていたら隣の俺の友人が俺に呟く。


 「……本当に俺達竜人が万物様の『剣』だったんだろうか……?」


 友人の顔を見て、ポンと肩に手を置く俺。それ以上は口にするな、と目で語りかけるのも忘れずに。


 俺や友人のように竜人でも下っ端のものはそうでもないが、力と地位のある竜人の中には、『万物の樹の剣』として慢心し、周囲の多種族よりも自らを上位の者として扱う事が多々見られる竜人の国。


 兵士の中でもそれを傘にし、多種族から賄賂を受け取っている奴も多いと聞く。故に、そういう者達が聞いたら激昂するであろう言葉は、下っ端である俺達は気をつけなきゃいけないのだが……


 (今回の隊にはいないみたいだな……流石バル団長が率いているだけある……!)


 到着しただけで圧倒している俺達兵士とは違い、バル団長はラヴィ副団長とリードミアキャット様の話を聞いていた。実際には通訳のアクア族の言葉を聞いていたわけだけど……


 話を聞き終わったバル団長は、俺達兵士に向き直り指示を出す。


 「いいか!これから俺達は緑のドームの洗礼を受ける!『万物の樹の剣』として相応しい者ならば通り抜ける事ができるそうだ!しかし、万物の樹や住民にとって有害な者は弾かれる!弾かれた者は、我が街に戻り次第、除隊となるから心せよ!」


 兵士全体に響く団長の声に、身震いしたのは俺だけじゃないはずだ。竜人が兵士を除隊になったら、街の多種族に侮られ街に住めなくなる……!


 不安に思った奴も多かったのか、兵士達の間にざわめきが起こる。その様子を予想していたのか、ニヤっと笑った団長が更に声を上げる。


 「いいか!ここにいる兵士は俺と副団長が吟味して認めた奴らだ!お前達一人一人自信を持て!『万物の樹の剣』としての誇りを俺や副団長にも見せてみろ!!」


 その言葉には、驚きと共に沸々と湧き上がる思いに、誰しもが言葉を失った。


 (……俺も、あの雷光のバル団長と冷静なラヴィ副団長に選ばれた一人だったのか……⁉︎ こんな下っ端の俺が……!)


 思わず友人と顔を見合わせて頷きあい、ビシッと姿勢を正すと周囲の兵士達も同様に隊列を組み直す。


 その様子を満足そうに見たバル団長。


 「よし!ならば俺に続け!」


 クルッと向きを変え緑のドームに歩き出す団長と副団長。


 「「「「「「はい!!!」」」」」」


 俺達も三列になったまま一同歩き出す。


 既に中に入っているリードミアキャット様とアクア族を目指して……



  ーーーそれは一瞬だった。


 

 通り抜けた瞬間の、一つ壁を乗り越えた感覚と高揚感。


 そして、最後の一人まで気を緩めず歩き、団長の前に一人も欠けずに足並みをそろえて立ち止まった時ーーー


 「流石は俺達が見込んだ兵士だ!!」


 バル団長の言葉で、緊張感が一気弾け、大声で叫び出す俺達。


 やはり少なからず不安もあったため、皆が皆を叩いて褒めあっている姿に俺も久しぶりに大声で笑った。


 そんな時に何処からか聞こえて来た大音量の声。


 『皆さんようこそ!フォレスト空港ターミナルビルへ!ここからは私ラスタが皆様をご案内しましょう!……ところでこんなに嬉しい場面に足りない物がありませんか?』


 「グーウウ!!」


 『はい!リーフ様正解!そう、お酒です!とはいえ、皆さんお仕事中ですからね……まずはバル団長、ラヴィ副団長が許可しないといけません。ささ、リーフ様、あの言葉をどうぞ!』


 「グウグーウウ、グ?」


 「あの、リーフ様……それだと軽すぎるかと……」


 「グウグウグー!!」


 「……いえ、もっと軽くなりました。出来たら予定通りの言葉をお願いします」


 「……グゥ………グググググゥグ……」


 「コホン……!リーフ様が『本日のフォレスト空港は皆様の貸切で、何をしても無料です』とおっしゃっております」


 『イヤイヤイヤ……ブレス。そりゃ無いわ。っていうかリーフ様!何が『お好きにどーぞ』ですか!ちゃんと歓迎してあげて下さいよ⁉︎』


 いきなり聞こえて来た歓迎の声とリーフ様とアクア族のやり取りをただ黙って見ているしか出来なかった俺。


 でも周りを見ると、他の兵士達も団長でさえ固まっていたから皆同じ気持ちだろう……


 さっきの高揚感を返せ……!と。

 

 そう思っていると、またラスタという女の声が聞こえて来た。


 『えー失礼しました。では、改めまして……リーフ様の許可が出ました!では此処から[人気アナウンサーラスタが案内するフォレスト空港発→万物の樹空港行きガイドツアー!]に皆様をご招待いたします!はーい、本物の万物の樹を見たい方はリーフ様の後について行って下さーい!』


 その場にいる誰もがざわついた……!

 が、一番に食いついたのはやはり団長だった。


 「本当に万物の樹に会えるんだろうな……!」


 天井を見上げて確認する団長の言葉に、誰しもがラスタという女の返答を待った。


 『あたり前じゃないですか!ここに入れた人の特権ですよ〜。さあ、リーフ様が待ってます!参加者は急いで下さいねー』


 すると、団長、副団長が共にリードミアキャット様の後を付いて行ったのを皮切りに、続々と動きだし、結局全員が参加をする事になった。


 (こんな機会二度とはないだろう……!)


 それが俺達兵士全員の思いだった。


 ーー後日、二度どころか毎日会いに行ける様になるとは思いもせずにーー


 そんな思いを知ってか知らずか、ラスタという女が更に驚きの発言をして来た。


 『あ、出発前に[フィトンチッドの雫]認証検査機全員試して下さいねー!』


 「「はあ⁉︎」」


 団長と副団長が珍しく口を揃えて気の抜けた声を上げたが、それは兵士全員の心の声を代表してくれていた。


 ……フィトンチッドの雫まで手に入るのかよ⁉︎ どうなってるんだ、この建物⁉︎

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