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竜人の迎え方 1

 「そろそろ到着する頃……か」


 「そうじゃのう、ぼちぼちじゃろ」


 「そうですね、だからあの二人がここで遊んでいるんですよ」


 万様が見えるルーフバルコニーで、優雅にお茶をする俺とガロ爺。


 そのテーブルの上、同じようにミニコロボックル専用テーブルと椅子で優雅にクーパーが淹れたお茶を飲みながら、ルーフバルコニーにスクリーンを設置中のラスタとチェックの様子を見ているエラン。


 そう、動けない俺達の為に、報道局と魔道具師のヴェルがまた何かを開発させたらしい。


 「……よしっ!出来た!」


 「流石チェック!早速確認よっ!」


 どうやら設置できたらしいスクリーンを起動させると、次々と映し出される様々な角度の竜人達。


 今回導入されたものは魔導小型カメラ。諜報部隊に合わせて擬態化機能がついているらしい。


 任務に当たっているアクア族遠征部隊が装着し、スクリーン上で六枠それぞれ別の映像が映し出されている。


 例えば、厳しい表情の竜人のアップ、竜人達全体の上からの映像、補給部隊の映像、兵士達が通りすぎる映像、竜人達の装備のアップ、竜人達をバックにサムズアップをするリーフ。


 そんなリーフが出た途端、ブッとお茶を吹き出す俺。


 「っはぁ?何やってんだリーフ!!連れ戻さないと!」


 「ほっほっほ、タクトよ。リーフが志願したんじゃと。先陣はリーフとアクア人が取るらしいぞい」


 俺がガタっと席を立って連れ戻しに行こうとすると、ガロ爺に腕を掴まれ止められる。


 「大丈夫です!リーフ様には護衛として、アクア人遠征部隊が10名ついています。更に撮影も兼ねて6人アクア人の遠征部隊がいますから!」


 「どうやらルチェ・レーヴェン空港報道局メンバーもいる為、アクア人遠征部隊は総勢30人はいるそうですよ?」


 ラスタとチェックも安心するように言うが、正直アクア人の遠征部隊の実力がわからない為不安になる俺。


 「タクト、ほれ。いい素材が出たぞい」


 そんな俺の表情を読み取ったガロ爺が指差す先には、遠くから近づくオーク3匹。


 竜人達は近づくと威圧で追い払うが、この辺の治安を考えると倒しておいてほしいもの。


 そんな竜人達が立ち去った後にカメラが捉えたのは……


 鋭い刃の型になった液状化状態のアクア人の一部が、鞭のようにオークに向かいスパンッとオークを上下二分割にした映像と、すかさず他のアクア族の隊員がオーク取り込む様子が映し出されていた。


 その作業にかかった時間は約1分。


 「見事っすねー」


 「あれは訓練されてなきゃできないな」


 クーパーとエランが呑気にお茶を飲みつつ感想を言うが、え、何今の?とついていけない俺。


 「ガロ様の戦い方に1番似ているのがアクア族でございますね」


 思わずガタッと立ち上がった時にこぼしてしまった俺のお茶を綺麗にし、再度新しいお茶を注ぐスーパー執事のフォー。


 「苔桃のシャーベットと苔葡萄のアイスをご用意しております」


 そんな用意周到なフォーの手元にあるのは、ピオールとシーラさん作スイーツ。


 ピオール食堂は最近育ってきたシェフ達に任せて、俺達の為に腕を振るってくれているピオールに加え、スイーツ系に強いシーラさんも気合いを入れてくれているようでありがたい。


 一先ず、それぞれがダブルで頼んだり、一つずつ味わったりする中、スクリーンの映像では竜人達の一団が立ち止まった画像が映し出されていた。


 「流石に気付かれましたかねぇ」


 「竜人だもの。気付かないわけないわ」


 あちゃーと困った表情のチェックに、こうなるのを予測していたラスタ。インカムでどこかとやりとりをして、GOサインを出している。


         ******


 ー竜人サイドー バル視点


 「団長!やはり我ら囲まれております!」


 調査を終え駆け寄る兵士の一人に、俺は報告を受ける。その点に関しては、俺も気配で気づいていた。


 (だが、フォレストドワーフにしては気配が違う……?一定の距離を保ったままついてきているからには、すぐに攻撃するつもりはなさそうだが……)


 「ああ、そうらしいな。ラドゥ!報告!」


 「ハッ、先程のオークは既に形跡すらありませんでした!戦いぶりからしてフォレストドワーフではないと思われます!」


 「姿を見たものはいるか?」


 「ハッ、兵士達数名より、透明な液体がオークを倒していたと報告が上がっております!」


 (透明な液体……アクア人か?だが、奴らは姿を現さずに先代の守り人を守っている筈だが……)


 副団長のラドゥの報告に考え込む俺の下に、また新たな連絡が入る。


 「団長!すぐこちらに来てください!」


 普段は冷静なうちの兵士が、焦り声を上げるとは珍しい。


 「どうした?まずは報告を……」


 「見間違いでなければ!あのお姿はリードミアキャット様かと!」


 「何⁉︎ どっちだ!案内しろ!」


 万物の樹と関係の深いリードミアキャットと聞いたからには、俺と副団長のラドゥも兵士とともに移動すると……


 「グーググウ♪」


 トコトコとフォレストドワーフの街へと向かう道を、数名の人間を引き連れて歩いてきていたリードミアキャット様。


 「に、人間と一緒にいるとは……!!」


 「待て!よく見ろ!」


 兵士の一人が良からぬ判断をし向かって行こうとするのを抑える副団長のラドゥ。


 (耳が青い……やはり周囲を囲んでいたのはアクア族……か)


 俺自体は予想していただけに戸惑う事なく冷静に分析できたが、兵士達はザワザワと騒ぎ出してきた。


 「人間がなぜリードミアキャット様の近くに……!!」


 「早くお助けしないと……!」

 

 ここにいる兵士達はアクア人が擬人化した姿を見た事がないものが多い。


 血の気が多いのも竜人の性故、俺はラドゥを連れてすぐさまリードミアキャット様の前に敬礼の姿勢を取る。


 すると更にざわめく竜人兵士達に向けて聞こえるように、俺はリードミアキャット様に語る。


 「お初にお目にかかります、リードミアキャット様。我らは貴方様達を迎えに参りました。我ら竜人は『万物の樹の剣』。貴方様の安全の為にもアクア族を側に従えるよりも、どうか我らの街へとお越し下さいますように」


 敬意を込めた筈の俺の言葉に、リードミアキャット様の後ろに控えているアクア族の表情が険しくなる。


 うちの兵士達はアクア族と理解した為ざわめきは少なくなったが、アクア族の表情に即座に戦闘態勢をとっていた。


 そんな中リードミアキャット様が声を上げる。


 「グーググウ?グググーウ、ググ?」


 「リーフ様は貴方達をもてなしたいそうです。時間を取れるか聞いていらっしゃいます」


 正直言って、アクア族の通訳が入って助かった……!


 何せリードミアキャット様……リーフ様というのだろう。悔しい事に、その言葉が我らにはわからなかったのだから……


 黙っている俺の様子に、ラドゥは俺の代わりに兵士達に敬礼の指示を出す。


 そして横に並び「団長の指示に従いますよ」と言うラドゥの言葉に、俺も意思を固める。


 「リードミアキャット様、いえ、リーフ様のご提案を無視するのは我々としては本意ではございません。是非我らをお連れ下さい」


 (例え何かが仕掛けられていようとも、俺の力でなんとでも切り抜けられるだろう)


 ーーーこの時俺はそう思っていた。


          ******


 ータクトサイドー


 「意外にもこちらの提案に乗ってきたな」


 「ほっほっほ、どうにでもなると思ったのじゃろ」


 ふう……とため息を吐いてその様子を見ていた俺に、相変わらず余裕のあるガロ爺。既に何個目かわからない苔桃ジェラートを頬張って笑っている。


 「とりあえず、コラルド人の前哨戦みたいなものですね」


 「万物様の力を忘れている奴らなんか、思い知ればいいのよ」


 ヘッドホンをずらしこちらを向くチェックに、竜人の態度に少々プリプリしているラスタ。


 「我がエバーグリーンもいつでも体制を整えております」


 どうやら万能執事フォーも今回の事に噛んでいるらしい。


 ……しかし、どうして俺が理解するのはいつも最後なんだろう?

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