11話 宿でのひと時
遅くなりました。
時間は掛かりますが、自分の納得行く終わりまで書き上げるつもりでいます。
ジャンプマンガの様に突然の打ち切りみたいな終わりにはしないつもりなので、お付き合い下さい。
宿の中に入ると煌めくシャンデリアと赤い絨毯、大理石の様な石製のカウンターにパリッとした制服を着ている受付嬢と執事風の男性が挨拶をしてくる。
「ハイゼンベルク様、本日は当ホテルをご利用くださり、誠にありがとうございます。」
「今晩はお世話になるわ。」
アンナ様がそう応えると、マルクスさんが係の者に荷物を預け、受付で手続きをし始めた。
「ハイゼンベルクお嬢様は長旅でお疲れだ。食事のより先に湯浴みがよろしいだろう。用意はできているか?」
将軍が執事風の男性へ伝えると
「はい。出来ております。」
「ではお嬢様、先に湯浴みへ行かれてはいかがでしょうか。その間に食事の用意も出来ましょうぞ。」
「そうね。ではそうさせてもらおうかしら。」
「お嬢様の護衛は我が騎士には女性もいる故、責任を持って行おう。そなた達も大変であったであろう。私も居るので、安心して行ってくると良い。」
そう言うとアンナ様は女性従業員に案内されて、女性騎士2人と共に奥へ歩いて行った。
俺とマルクスさんも返り血や砂埃で汚れていたから食事より先にさっぱり出来るのはありがたい。
我々も男性従業員へ案内されて浴場へ。
「うおー!広いですね!」
脱衣所から浴場へ足を踏み入れた俺は思わずそう言わずにいられなかった。
湯気がモウモウと立ち昇る広い浴場は学生の頃に歴史の教科書で見た事のある古代ローマの浴場そのものだった。
というか、この世界でも入浴という文化があったんだな。
日本人としてはとても嬉しい限りだ。
「ここはイルミエンナの中で王族や貴族の皆様の様な高貴な方々が宿泊する宿ですからね。私もお嬢様の御付きで無ければ入る事は叶わないでしょう。我が国では風呂では身分も何も関係無いと、基本的にはこうした大人数で入る浴場が多いですね。政治に関わる貴族はこうした場で議論を交わすことも多々あるくらいです。」
マルクスさんが説明してくれる。
そうだよなー。
公爵令嬢のアンナ様が泊まる宿が普通の宿では無いもんだよな。
今はご相伴に預かろう。
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俺は身体を洗ってから湯船に浸かる。
「ふぃー、疲れた身体に染みるー。」
今日は異世界に来たばかりだというのに色々とあったな。
異世界に来て、いきなり公爵令嬢のアンナ様達を助ける事になったし、ゴブリンとはいえ、初めて生きている生物に銃撃を加えた。
普段は的に向けて撃っているだけだったのに。
あの時はみんなを助けるのに必死だったのと、人型だけどモンスターだから撃てた。
そう、人型の生き物に。。。
アンナ様はこの国が他国と戦争をしていると言っていた。
俺は自衛官だ。
いざという時には国の平和と独立を守り、国民の生命を守ると誓って自衛官になった。
でも、それは日本での事。
日本は軍事的圧力を加えてくる大国に囲まれて、不安定な平和ではあるが、少なくとも人を撃つという事は起こらなかった。
この世界ではどうだろうか。
いざという時に人を撃つ事が出来るだろうか。
俺はそんな事を考えながら、少し荒んだ心の傷も温かいお湯へ溶かし込んでいった。
「湯加減は如何ですか?」
マルクスさんも身体を洗ってこちらへ来たようだ。
「いやー、気持ちいいです。故郷でも湯船に浸かる習慣があったので、ここでも入る事が出来るとは思いませんでした。」
「なら良かったです。今日はお疲れでしょうからゆっくりして下さい。しかし、今日はサトウ殿に助けて頂けなければ、こうして湯船に浸かる事も出来なかったかと思うとゾッとします。」
「本当に助けられて良かったです。にしてもこの広い浴場に2人しか居ないのは少し寂しいですね。」
「今は国内旅行という雰囲気でも無いので、それも仕方ないのかもしれません。」
こんなところでも、そういう影響が見えるのか。
「明日はここからどのくらいで王都へ着くのですか?」
「明日は朝早くから出発して、恐らく今日と同じくらいの時間には王都へ到着する予定です。」
「少し思ったのですが、国境地帯から王都まで半日で着くんですね。近いなーって。」
「元々我が国は国土も広く有りませんが、今回使っている馬車も馬も特別で普通の馬車より速い速度が出せるのです。普通の馬車だと途中の宿場町で宿泊しながら3日ほどは掛かるかと。」
「あっ、そうなんですね!」
たしかに窓から見ていて流れる景色は速く過ぎ去っていた。馬にしては速度が出てるなとは思っていたけど、もともと車でスピード感に慣れていたのであまり違和感を感じていなかった。
「馬は高速馬車で使役されている特別な馬なんです。普通の引き馬よりも速い速度を1日続けてもバテないとてもタフな馬ですし、馬車も揺れを減らす魔法や車輪に滑り易い魔法が掛けられていて、馬への負担も減っていて通常の高速馬車よりも速度が出せるのです。それもこれも公爵様のご配慮です。なので、サトウ殿にはお嬢様を救って頂いて心より感謝しております。」
「明日も護衛はお任せ下さい。」
マルクスさんとその後も他愛ない会話を楽しみつつ、身体が温まった頃合いで湯船から上がった。
脱衣所へ戻ると先ほど脱いだ服が綺麗に畳まれていた。
マルクスさんが言うには洗浄魔法で洗濯してくれているらしい。
たしかに服から陽の光で干し上げた洗濯物の様な香りがした。
すごいな魔法。
服を着て、外へ出ると執事風の従業員が立っていて、食事会場へ案内してくれるそうだ。
お腹も空いた俺は、初めての異世界の食事がどんなだろうと楽しみにしながら着いて行った。




