第1話 佐藤健
初めての投稿になります。
作品内の設定や詳細には多少の齟齬があるかもしれませんが、どうか生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
設定の齟齬やミスがあれば気付く度に修正していきます。
俺は佐藤健。
俺は今、草原に居る。
牧場とかそんなレベルじゃない。子供の頃にテレビで見たモンゴルの大草原を思い出す光景が目の前に広がっている。
何故こんな事になったのか?
時は数時間前に遡る。
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昨今、世界情勢が不安定な中、数年ぶりに全国の陸海空自衛隊合同の大規模な演習が行われている。
数年ぶりの大規模演習とあって、大型の台風が接近してる悪天候だが演習は継続している。
今は富士山の裾野に広がる訓練場内を移動中だ。
「おい、佐藤!この演習終わったら休暇だな!実家には帰るのか?」
「いや、帰る予定は無いよ。母も今は施設暮らしだし、親父の墓参りは年始に済ませたからな。」
「そうなのか。休暇はどう過ごすんだ?」
「今の所は何も予定は無いな。独身だから寮へ夜には帰ってこないと行けないし、申請出して泊まりに行く用事も無いしな。」
そんな何てことない会話を同行している別小隊の隊長、長谷川としつつ、顔についた雨粒を拭っていた。
空を覆う黒い雲は時折、雷鳴を響かせている。
俺は佐藤健、日本国の陸上自衛隊陸上総隊隷下中央即応連隊に所属する自衛官だ。階級は2等陸尉。防大卒業後、あちこち回され、気付けば出世街道からは外れてしまった三十路である。
同期で早いやつは佐官になっているやつも居るが、自分はあまり出世欲は無く、防大に入ったのも厳しい父親の居る家から出たかったからだ。
そんなモノローグ的な考えを頭に思い浮かべながら歩いていると目的の演習場に着いた。
本日の演習は敵陣地への偵察訓練だ。
ここからは事前に行われたブリーフィング通りに各小隊へ別れ、敵陣地を左右から偵察、攻撃があった場合は反撃しつつ撤退する流れだ。
佐藤小隊は右翼から敵陣地へ接近していく。
ガサガサとクマ笹をかき分けながら歩いていると、先行している小隊員から『敵から攻撃!』という声と共に訓練用の空砲音が辺りに響く。
雨音に紛れている為にハッキリとしないが左翼からも聞こえるので長谷川小隊も交戦しているのだろう。
戦闘が行われたら偵察任務は続けなれない、そう判断し『撤退!』と声を掛け小隊員へ指示を出す。
その時、『うわーっ』と声が戦闘音の方から聞こえた。
誰かが負傷したのかと声の方に駆ける。
その時だ!
ピカッ、ドゴーーーン。。。。
真っ白な世界に包まれ、自分は意識を失った。
※セリフの「」が『』になっていたので訂正しました。