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一章46話 異世界八日目 贖罪日の後日談②


 それから数分間スイは歌ったり騒いだりと慌ただしかったが、途中で興味が薄らいだのか、ふと動きを止めて、再び俺が座る長椅子の隣に腰かけた。


「お兄さん、お兄さん。念のため今から検査をします」


 スイはそう言うと、急に俺の目の前で手をパチンと叩いた。とても大きな炸裂音が礼拝堂の中に響き渡る。突然の行動と、それに伴う大きな音に驚き、瞬きをしてしまう。


「えっと……?」


 手を叩いただけにしては大きな音だ。何か叩き方にコツがあるんだろうか?


「うむうむ、その反応からすると、ちゃーんと約束は守ったみたいだねー、お兄さん。えらい、えらい」


 スイは嬉しそうに笑みを浮かべた。


「約束というと……南の広場に行ってはいけないって件ですか?」


 おそらくだが『約束』というワードから推測するに、直近のものだと贖罪日の朝にスイに注意されたところだろう。なぜ、目の前で手を叩くことが約束を守る証明になるかは分からないが。


「そうそう~。お兄さんは真面目だから約束を守ってくれるって信じてたけど、もしかしたら、好奇心に負けて行っちゃうかなーとも思ってたから、少し心配してたんだよー」


「自分はアレらしいので、行かないようにしました」


 アレが何か分からないけど。


「そうそう、お兄さんはアレだから、行かなくて正解だよ~」


「ちなみに、アレって何ですか?」


「アレはアレだよ~」


 やはり教えてはくれないようだ。少し気になる。


「ヒント、ヒント、お願いします」


「ヒントかー。うーん、鏡では分かりにくいけど、言葉にははっきりと現れる、かな。おお! 我ながら知的な言い回しだねー。優秀さが言葉に現れてる感じがしないー?」


 同意を求めるスイに対して、適当に「ええ」と頷き、ヒントを考察する。「ええって何、お兄さんー」鏡では分かりにくいけど、言葉にははっきりと現れる――なぞかけだろうか? 「お兄さーん、無視はひどいよー」それともそのままの意味だろうか。前者は苦手なので、後者について考える。「お兄さん、お兄さん、ちゃんと反応しないと面白くないよー」鏡では分からない、姿、特に鏡を使うって場合は顔や上半身がターゲットになるはず。だから、そういった場所には現れにくい特色ということだろうか。それで、言葉には現れるということは口調や話し方、あと考え方なども関係しているということだろうか。「お兄さん、お兄さん」総じて、外面ではなく内面的な部分が関係しているということだろうか。今までのスイとの会話を振り返ると……うむ、いい加減答えるか。


「ええっと、ああ、ケチとか、ですか? ケチだと参加しない方が良いイベントみたいな」


「ハズレ~」


「うーん、違いましたか」


「悩んだ割に面白くない回答だったので、お兄さんの点数は全部没収です。ボシュ~、0点です。今日はお兄さんがちゃんと反応しない詰まらない日なので、特別ルールを実施します」


「特別ルール?」


「お兄さんは持ち点が100点になるまで、礼拝堂から出ちゃダメです。鐘が鳴っても外には出れないよ~」


 スイは両手の指をわきわきとさせ、邪悪に笑った。相変わらず可愛い表情と仕草なのだが、若干怖いポーズだ。


「ええっと、礼拝が終わったらユリアさんと約束があるので……」


「はい! マイナス100点。ユリア関係はビシバシ減点していくから、そのつもりでね」


 マジで仲悪いのか……? なんか逆に気になってきたぞ。点数無視してそっちを探りたくなる気分だが、あんまり趣旨に沿わない回答をするのも、ここに通っている本題である『スイの朝の雑談に付き合う』から逸れるので、しないでおくか。


「えーっと、じゃあ、白い鳥の話ってしましたっけ?」


「それまたやったら500点減点するからね~」


「ユリアさん関係よりダメなんですね、あのネタ。気を付けます」


「そうそう、気を付けたまえ~。お兄さんがまた一つ賢くなれたので、10点をあげましょー。これで残りは190点だよー」


 よく分からない基準で10点もらえた。


「ええっと、じゃあ、この前、ギルドで人が言ってた話ですが――」


 それからスイの無茶ぶりに付き合わされ、色々な体験談や過去話をした。


 頑張って120点ほど稼いだが、残念ながら時間切れになってしまった。

 しかし、鐘が鳴ったときにスイは満足したのか、「お兄さんはお兄さんだから、特別に1000点あげよー。目標点を大きく超えたので無事解放~。ユリアのところに行っていいよー」と万遍の笑顔で言われ、無事図書館へ行くことが認められた。

 何と言うか、今日のスイは全体的に楽しそうだった。色々話を捻った甲斐があったと言える。まあ、ネタは殆ど尽きたので、特別ルールは一か月に一度くらいにしてほしいところだ。



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