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一章22話 異世界四日目 ルティナの魔術講座②


「質問してもいいですか」


「いいよ。どこが分からなかったの?」


「魔石は『自分の魔力』が足りない場合、まあ概ね足りないのが基本みたいですが、そういう時に必要なんですよね。魔力が凄く多い人は無くてもなんとかなったりしませんか?」


 俺が聞くと、ルティナは少し考えた後、なぜか顔を赤くした。ん? またなんか地雷踏んだ?


「カイ。さては、自分は魔力も天才的だと思ってるでしょ……! 本当っ生意気! 調子に乗らない! 言っとくけど、私は20層で活動できる探索者なんだからねっ。上には上がいるんだから!」


 思ってないけど……ん? え? ルティナって20層組なの? え? 凄くね。なんか13層くらいの探索者だと勝手に思ってたけど、過小評価だったようだ。まさか、そんなに深層で活動していたとは……


「20層とは……凄いですね。クリスク遺跡でその領域まで活動しているとは……もしかしてAAランクパーティーというやつですか?」


 俺が適当に煽てると、ルティナは気を良くしたのか一瞬笑顔を作ったが、すぐに何かに気付いたようにハッとした顔になった。なんか表情がコロコロ変わって可愛いな。


「話を逸らさない! そういう作戦は分かるんだからっ! とにかく! そんな事は滅多に無いんだから! よほど魔力量があっても魔石は必要だよ。まあ、極々稀に魔石を使わないでも魔術を使える人がいるって聞いたことがあるけど、でもそんな人だとしても魔石を使った方が効率がいいはずだから、魔石を使うよ。発動回数にも関わるしね」


「発動回数?」


「魔術を使える回数の事。魔術は使用するごとに色々なものを消費するの。魔石と触媒は消耗品だし、あとは発動体も使用すれば摩耗する。でも一番消耗が激しいのは『自分の魔力』。これが最初に無くなることが多いの。だから、仮に魔力が多い人でも、魔石を使用しながら魔術を使った方が継戦能力が上がるから、『自分の魔力』だけで魔術を使う事はないよ。だからカイも、もし仮に、仮にだよ、仮に魔力が多くても、ちゃんと魔石も使う事。わかった?」


「了解です。先輩」


「よろしい。あとは質問はある?」


 よし、一番気になるところを聞こう。


「えっと、似たような質問になってしまって恐縮なんですが、触媒や発動体も必需品ですよね。無くて魔術が使用できるなんてことは無いですよね」


 これは重要だ。もしなくても使用できるなら、俺の『感覚』は魔術の一種の可能性がある。まあ呪文唱えてないじゃんって話だが。だが、触媒や発動体が絶対に必要なものなら俺の『感覚』は魔術ではない。触媒も発動体も俺は所持していないからだ。


「当たり前だよ。カイ。私の説明ちゃんと聞いてた? もしかして、分かったフリしてた? 別に聞いてくれれば怒らないから、ちゃんと分からないところは聞いてよ」


 さっき聞いたら怒ったじゃん。いや、それはいいか。とりあえず、俺の『感覚』は魔術ではないっぽいという事が分かったな。


「あー、いえいえ、ちょっと確認したくて……ちなみに触媒や発動体も使用せずに使える魔術みたいな技術ってないですかね」


「そんな便利なものはないよ。物でいいなら使い捨てのスクロールがあるけど、技術だと……ん、あ、一応あるけど、カイには使えないよ」


 ほう、あるのか。


「どんな技術なんですか?」


「聖なる術。聖導師の技だよ。聞いたことある?」


 ああ、スイの言ってたやつか。へー、あれって触媒とかいらないんだ。そういえばスイも魔術とは似て非なるものみたいな事言ってたな。


「一応聞いたことが……というか、スイさんに教わりました」


「スイが聖導師って事知ってたんだ」


「本人が言ってました」


「なら聖導師に関しては私も本職じゃないから、気になるんだったらスイに聞いた方がいいと思うよ」


「明日会う予定なので、聞いてみます」


「明日? スイはそろそろ贖罪日の準備で忙しいはずだけど何時会う気?」


「一応、定義上は朝の礼拝なので、朝の8時くらいです」


「朝8時……まあ、大丈夫かな……スイはいつも暇そうにしているし、実際暇人だけど、あれでもクリスク聖堂の聖導師だから、忙しい日もあるの。だから、会う約束は忙しくないときにしないとダメだよ」


 なるほど。気を付けよう。ん? でも、あれ……? 朝の礼拝に来るように言ったのはスイだったような。


「一応、明日の朝会う事は、どちらかというとスイさんが決めたんですが」


「え!? あー! もう! スイは一体何やってるの……! 大事な贖罪日でしょ……!」


 俺に言われましても……


「えーっと会わない方がいいですかね?」


「まあ、一応、間に合うみたいだし、会ってもいいよ。それじゃ、話を戻すけど、魔術の発動までの流れについてはいいよね? 次の説明していい? 他に質問ある?」


「いえ、特にないです」


 『感覚』については新しくわかることは無さそうだ。まあ、明日スイに聖なる術について少し聞いてみるとしよう。


「それじゃあ、有名な呪文についてだけど……折角だから、カイの適性について調べるね。左手とおでこ出してっ」


 言われた通り左手をテーブルの向こうへ差し出し、体を座ったまま少し前にやり額を近づける。ルティナは右手で俺の左手を握り、左手で俺の額に触れた。なんか緊張するな。スイもそうだったか、ルティナもかなりの美少女だ。無駄に胸が高鳴ってしまう。

 それからルティナは目をつぶると、何度も小さな唸り声を上げた。美少女がやると唸り声すら可愛く見える。しばらく黙って見ていたが、唸り声は止まらず、そのまま数分が経過したところで、ようやく、ルティナは唸り声を止めて口を開いた。


「うーん。光は無さそう。炎も駄目っぽい。風はいけそうかな。水は怪しい。他は分からないかな」


 なんか、ざっくりしてるな。そう思ったのが表情に出てしまったのか、ルティナが俺から手を離して咎めてきた。


「ちょっとカイ。これ凄く難しいんだよ。私レベルの術者でも凄く集中してようやく分かるんだから。言っておくけど、魔術適性審査所で調べてもらうと凄くお金がかかるんだからね。タダでやってあげてるんだから、もっと有難く思ってよ」


 そんな難しい技術なのか……あれ、でもスイがやったときはもっと早かったな。ルティナの言葉を信じるならば、スイはかなり高位の術者ということだろうか。いや、まあ実際同じ聖導師のユリアが高位の探索者パーティーに所属しているというのもあるし、聖導師であるスイもかなり高位の技術を持っているというのは、それほどおかしいことではないか。

 スイのことを考えつつも、目の前のルティナに対応する。


「なるほど。使い手が限られる高等技術な訳ですね。ありがとうございます」


 俺の言葉を聞くと、ルティナは得意げな表情を浮かべた。やっぱり褒められると弱いタイプと見た。

 ルティナは飲み物に手を付け、喉を湿らすと再び口を開いた。


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