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一章14話 異世界三日目 探索


 教会を出た後、俺は宿や公共施設などで聞き込みを行いカテナ人について調べた。そして分かった事がある。カテナ人というのは非常に範囲が広い言葉だということだ。

 カテナ人というのはカテナ大陸で生まれた人や育った人、そして暮らしている人を指す言葉らしい。ちなみに今俺がいるクリスク遺跡街もカテナ大陸にある。正確に言うと、カテナ大陸にあるミトラ王国の中のクリスク遺跡街にいる。俺はまだ数日だが一応このクリスクで生活している。なるほど、ギリギリだがカテナ人と言えなくもない。

 そして、そのカテナ人の共同体の一つがカテナ教のようだ。色々と得心がいった。一応俺はカテナ人であり、カテナ教からすると仲間的な扱いになるらしい。良かった良かった。


 一通り納得し安心感を得た後、一度ギルドに戻り、資料室を漁ることにした。まずは今後のために、中層から深層にかけての採取物の確認を行った。次に自分の『感覚』について知りたかったので、調べてみたが、そちらに関しては資料などでは分かることは無かった。一応、探索者の役割や遺跡内部での魔術利用の注意点などを箇条書きにしたマニュアルのようなものを見たが、残念ながら俺の『感覚』のような現象は確認できなかった。資料室で手に入る情報では掴めそうにないな。

 まあ、昨日の昼組と夕方組を見ても、異常な採取物の入手を行っている存在は確認できなかったし、やはり非常に珍しいことなのだろう。まあ、念のため、今日もう一度昼組と夕方組を確認して、彼らの中に異常な成果物を持つパーティーが存在しないかをチェックしよう。たぶん成果は得られないと思うが……成果が無いというのも、自分の能力が極めて珍しいという確認にはなるので、一概に悪いだけではないけど。

 時刻は11時。昼組の確認、夕方組の確認、今日はこの二つをすればいいかな。だいたい昨日と一緒だな。あ、でも昼組の確認と夕方組の確認の間は時間が空く。『感覚』について、知りたいし、実践訓練も兼ねて、その時間は、1層に潜って調査でもするか。


 予定を決めた俺は、定位置である買い取り窓口を見渡せるベンチへと移動した。昨日と同じように昼になるにつれて徐々に入ってくる探索者たちを眺めながら、売却物などを確認していく。結果から言うと昨日と同じで、特別なものは確認できなかった。パーティーの探索階層や儲けなどもだいたい昨日と同じだ。昨日見かけた探索者もいれば、今日初めて見る探索者もいた。ふーむ、ルティナは活動日の間に休みを設けると言っていたが、そうでない人もいるようだ。

 それから、昼食を取り、1度宿屋に戻り準備を整えた後に、遺跡の1層へと向かった。採取道具を忘れないためだ。あと、一応練習も兼ねて昨日スイに選んでもらった革鎧と足回りの装備を身に着けている。少し重くて、違和感は感じるが、不快と言うほどでは無いし、慣れれば扱いきれると思う。軽いものを選んで正解だったかな。


 1層に入るとすぐに惹かれるような『感覚』が走った。今日は何が見つかるだろうか。今までと同じように、『感覚』に従い歩いて行く。20分くらいしたところで行き止まりが俺を出迎えた。そしてそこには大きな緑色の花が地面から7本ほど咲いていた。確かこれは、リィドという11層から15層で見つかる植物だ。やはり1層で手に入るものではない。さて、どうするか。まだ金はあるが……まあ、俺の能力がいつまであるか分からないし、回数制かもしれない。それなら将来のために採取した方がいいだろう。金はいくらあっても困ることはたぶん無いはずだ……それにスイへの返済的にも稼いでおきたい。いや、まあ、今の手持ちの金で十分返せるけど。

 この前と同じ悲劇を起こさないように、採取道具の中からシャベルを選びバックパックから取り出した。周りから慎重に掘り進めていく。20分ほどで、7つ全てを掘り返した。根もできるだけ掘ったので、ほぼ完全体のリィドを7本手に入れた。

 あと、ついでに面白いことが起こった。今回は1本目を掘り返したときから『感覚』を感じなくなった。そして、全て掘り終えた今も『感覚』は無い。ふむふむ、ちょっとだけ分かってきたぞ。今までの行動からの仮説だが、おそらくこの能力が発動するのは1日に1度、最初に遺跡に入ったとき。能力によって、何故かその層で入手不可能なものが手に入る。そして感覚は採取を始めると消える。

 ふと思ったんだが、2層に行ったらどうなるんだ? 1日1回のルールに触れるならできないが……いや、まあ、1日1回というのは昨日2度目に遺跡に入ったときに発動しなかったことからの推測だから絶対ではないか。まあ、どちらにしろ、2層は危険と聞くし、しばらくは考えなくてもいいか。

 一通り考えを終えた後、7本の花をバックパックに詰めて、その場を離れた。


 うーん。まだ夕方まで時間があるな。よし、せっかくなので1層を探索することにしよう。幸い、地図があるので迷う事はないだろう。バックパックに詰め込んだ花の重みを僅かに感じながらも1層を巡っていく。しかし、人がいないな。やっぱり1層は昼組だけみたいだし、午後は不人気なのかもしれない。実際、こうやって回ってみても、何も落ちていない。全て昼組に拾われた後なのだろう。そういえば、俺は毎回午後に潜ってるが、これも能力の発動条件だったりするのだろうか。

 数時間かけて、1層を巡ったが、結局新しい採取物は無かった。ちなみに探索者は途中で一人だけ会えた。たまたますれ違った時は、初めて遺跡内で人に会えたことに感動していたが、相手はそうは思わなかったようだ。彼はすれ違い様に、革鎧を付けている俺を不思議そうに見ていたからだ。まあ、わかる。なんで安全地帯で鎧来てるんだって話だよな。


 夕方組が帰還するよりも少し早くギルドに戻り、買い取り窓口へと向かう。うーん、革鎧を着込んで成果物を担いでギルドに帰還というのは、何か王道探索者みたいだ。我ながら雰囲気あっていいなとか、思ってしまう。

 遺跡とギルドの雰囲気に酔いつつも、カウンターの前に今日の成果物を置く。


「お願いします」


「リィドが七本ですね。状態が良いですね。流出も少ないし、それに魔力の含有率も高い……ん? あれ、もしかして、お一人ですか?」


 そっか、今の時間は人がいないから、ソロってバレるわな。うーん、ちょっと良くなかったかも。まあ、ルカシャの件があるので今更感があるが……


「ええっと、まあ」


「ああー、もしかして、噂の。ああ、いえ、失礼しました。リィドが七本でデリウス金貨14枚とデリウス銀貨4枚になります。よろしければ、ギルドカードをお願いします」


 『噂の』ってなんだ。ルカシャか、ルカシャの件か。やっぱりアレ広まってるのか……あんまりよくないな。強盗とかに会ったら嫌だ。


「大丈夫です」


 俺はギルド職員にカードを提示し、清算をしてもらった。今回は金庫行きではなく、直接硬貨を貰う事にした。理由は少し手持ちの金を補充したかったからだ。まあ、雰囲気に浸りたかったという理由もある。


「それと、フジガサキ様。昇級が決まりましたので、ご都合の良い時間帯を教えていただけますでしょうか」


 清算が一通り終わり、ギルドカードを返してもらおうと思っていたら、ギルド職員が思わぬことを話しかけてきた。昇級……早くないか?


「ええっと、都合に良い時間ってことは、何かあるんでしょうか?」


「ギルドの方で昇級の際の必要事項のお話等をしております。お手数ですが、ご協力お願い致します」


「ああ、そうでしたか。はい、えっと……では、明日の朝あたり……でしょうか?」


 特に予定は無かったので、近い日にぶち込むことにした。遠い日に指定して、こちらが忘れてしまったら悪いし。


「かしこまりました。では明日の10時に1階のホールでお待ちください。当日は担当の者が向かいます」


「あ、はい、わかりました」


 そう答えて、無事会話を終えた。丁度、明日の朝はギルドの様子でも窺おうかと考えていたので、ある意味丁度いいかもしれない。明日は朝のギルドの様子を見て、その後で昇級の話を聞く感じだな。

 それにしても、金貨14枚と少し――銀貨換算だと284枚か。結構稼いだな。現状の俺の一日の生活費が銀貨7枚から8枚くらいだから、今回の探索だけで35日分の生活費はまかなえそうだ。

 うん。とりあえず、明後日にはスイから借りた金を返済だ……返すのが早すぎるか? まあ、11層くらいまで行ったことにして、そこで稼いだということにすればいいか。ただ、ソロで11層まで行ってる人を未だ確認していないので、そこが少し変と言えば変か。

 いっその事、どこかにパーティーに入ったことにするか……それはそれで確認されたら変に思われるな。いや、まあ、そこまでいちいち考えるのは自意識過剰か?


 一度考えるのを止めた後、再び定位置のベンチへと戻り、夕方組を再度観察した。しかし、こちらも新しい情報は無かった。特に突出した存在は無く、また昨日のようなお祭り状態も無かった。


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