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二章45話 強さ順に並べよう


「悪くない組み合わせ、ですか。ちなみにマリエッタさんはどうして、そう思ったんですか?」


 別にこれを聞いたからといってホフナーと組むわけでは無いが、なぜそう思ったのかが純粋に気になる。


「結構、戦うのが上手そうに見えた! カイさんはどっちかっていうと魔獣と戦わないで潜るタイプだから! 得意が逆だから、組むと良さそうかなって!」


 なるほど……いや、でもそうかな? むしろ戦う人は戦う人だけ集まって魔獣を狩りまくればいいし、戦わないタイプは単独か複数で集まって戦いを避けながら遺跡に挑めばいいのではないだろうか。

 マリエッタの案は色々な状況に対応力できるようになるが、同時にどの状況でも『浮く』メンバーが出てしまうのではないだろうか。遺跡は総合力よりも専門性の方が良さそうな気が……あ、いや『フェムトホープ』は総合力のチームだったな。それにマリエッタやルティナも総合力重視思想が強かったはず。それならマリエッタのこの返しは自然だ。


「なるほど……確かに、総合的に考えると、お互いの利点でお互いを補えそうな感じがしますね……」


「戦闘力で決めなくてもいいでしょ……それに、もしそれなら、いっその事、私たちのパーティーに入ってもらった方がいいよ。カイのためにもなるし……アストリッドさんはどう思う?」


 ルティナは、少しためらい気味にアストリッドに声をかける。アストリッドは、一度ルティナを見て「そうね……」と呟き、俺の方をまじまじと見る。


「確かに、カイさんは魅力的でルティナやマリエッタが気にするのも分かるわ。でも今『フェムトホープ』に入ってもらうのは少し違う気がするわ。『フェムトホープ』は教会とも関係が深いし、気に入った人がいるからといって、すぐに入ってもらうのは難しいわね……もし、カイさんが入りたいという事だったら、ごめんなさい」


 お祈りいたしますみたいな感じか。俺が前の世界でよく聞いたものだ。一瞬だけ気が重くなるが、いやそもそも『感覚』がある以上、ソロでやっていくと決めているので、特に問題が無い事に気付く。


「あ、いえ、そんなことは……とても魅力的な方々がいらっしゃるところですが、同時に自分の力量では非常に難しいと思っているので、自然な事だと思います」


 特に問題が無いので、適当な返事をしたが、なぜだかアストリッドは気まずそうに押し黙ってしまった。なんか俺も気まずくなってきた。


「えっと、そういえば、戦闘力って言ってましたけど、ミーフェさんってどのくらい強いんですか? 本人談ではよく聞くのですが、自分から見るといまいち分からなくて。さっきマリエッタさんも言ってましたけど、やっぱり強いんですかね」


 気まずくなったので、話題を逸らすために適当なものを見つける。まあ少し気になってもいたところだ。いまいち、ホフナーやフェムトホープの人たちの強さが分からない。分からないので、その道の人たちに聞いておきたいところだ。きっと皆、俺よりは強いだろうし、なんか聞けるだろ。


「まあまあ強そうな感じがした! 魔法なしなら多分勝てない! ありなら負けない! あ、でも場所とか条件次第では負けるかも!」


 まずはマリエッタが威勢よく答える。マリエッタは後衛の魔術師だったな。ホフナーは前衛っぽく見える。ナイフが相棒みたいな事を言ってたし、たぶん前衛だろう。魔法無しならホフナーが勝つ、と。ん? それはそうではないか。だってマリエッタ後衛の魔術師なんだし……


「それだと全然強さが分からないよ。単純に接近戦だとミーフェって子が有利で遠距離戦だとマリエッタ有利なんじゃないの?」


 ルティナがさらに口を挟む。なるほど……ということはマリエッタとホフナーはだいたい同じくらいの実力ってことか? マリエッタはAAランクパーティーのメンバーでホフナーは自称ソロA級。なんとなく釣り合いが取れるのも分からなくはない。


「なるほ――」

「――言ってる事同じ! 結局どこから接近で、どこから遠距離か分からないなら意味ない!」


 俺が納得の声を上げようとしたところで、さらにマリエッタがルティナに言い返す。

 なるほど……? 確かにそう言われるとそんな感じもしないでもない。でも個人的には遠距離攻撃の方が有利になりやすいから、よほど接近戦の範囲が広くなければマリエッタの方が優勢かもしれない。

 まあ遺跡で魔獣と戦うとすると、また違うのかもしれないが。ん? いや、そもそも俺たちは探索者なのだから、対人戦の能力ではなく、対魔獣戦の能力で語るべきではないか……? まあ、俺はどうせ魔獣とは殆ど戦わないから対人戦の予想の方が分かりやすいか。


「それは、あの子の接近能力によるよ。マリエッタが一発目を打つまでに攻撃可能な距離が接近戦の範囲。でも、見た感じ、素早そうな見た目してたから、結構広いかもね……四十メートルくらいかな」


 結構広いな。四十メートル以内でホフナーが有利って結構凄く無いか。


「そんなに無いから! せいぜい三十メートル!」


 三十だったか、まあ、それでもまだ結構広いような……だって、ホフナーが持ってる武器ナイフだぞ。マリエッタが遠距離戦が得意ということを考えると、十分凄い。

 まあマリエッタの魔術がどれくらいの強さかがいまいち分からないが、でもたぶん俺の持ってる『風刃のスクロール』と近い性能ではないだろうか? いや、流石に元となっている魔術を使えるマリエッタの方が上か? どちらにしろ、距離の差を覆せるというのは凄まじい……。


「音節足りなくない? その音節で、三十メートルから急接近してくるミーフェ倒せる呪文撃てる? あの子、たぶん結構細かく動くと思うよ」


「靴すり減ってたね。でも、酒飲んでれば余裕!」


「飲んでる方が呂律が回らな……そうでもないか」


「今度探索するとき飲んでから行くよ!」


「それは絶対ダメだから」


 俺が考えている間も二人の会話は続いていく。なんか詳細を詰めてる感じだが……ルティナの読みだと三十メートルだとマリエッタがだいぶ苦しいようだ。うーん。ホフナーは俺の考える以上に凄い人なのかもしれない。AAランクパーティーの遠距離担当に数十メートル以内で有利を取れるのだからな。


「はいはい! じゃあさ! ボスはどう? あのミーフェって子とやったら勝てそう?」


「どうかしら? ……少し見ただけだから何とも言えないわね」


「いやいや、大体強さは分かるでしょ」


「そうね……幼い割に戦い慣れていたように見えたわ。今戦ったらどちらか上かというのは分からないけど、五年後、もし彼女が探索者を続けていれば、彼女の方が優秀な探索者になっていてもおかしくはない。そう思わせる程度の技量を感じたわね」


 明言は避けた感じだけど……これは五分五分くらいって感じなのかな? 周りも特に否定するような雰囲気はない。なるほど。アストリッドとホフナーは互角か。そして、探索者としてもホフナーは将来性がありそうと。結構、いや、かなり高評価な感じだな。


「おお! 結構高評価! けど、五年後ってわざわざ言ったって事は今はボスの方がやっぱり上ってことだね!」


「戦闘力に関しては何とも言えないわ。戦闘技能だけが探索者としての能力を決めるわけでは無いから」


「探索者としてはボスの方が上ってことか!」


「……今はまだ、ね」


 それには俺も同意だ。流石に探索者としてはアストリッドの方が上だろう。冷静さとかリーダーとしての器とか色々と違うと思う。そして何より人格が違いすぎる。倒れた人を介抱する人とすれ違った人を脅す人、どちらが素晴らしい人間かなど考えるまでもなく分かるだろう。


「じゃあ! 最後! ルティナ! どう? 勝てそう?」


「勝てるよ。同じ近接主体同士、地力が強い方が圧倒的に有利だからね。マリエッタよりも安定して勝てると思うよ。たぶん十回戦ったら十回勝つんじゃないかな」


 ほう? ルティナとホフナーはルティナの方が上なんだ。まあ、確かにホフナーもやけにルティナを意識してたし、分からなくもない評価だ。まあ、もう少しホフナー優位なのかと思ったが……いや、ホフナーに聞いたら、きっとホフナーも『赤いのには十回戦ったら余裕で十回勝てるから』とか言いそうだな。やっぱりルティナとホフナーは似てるんじゃないか……? 二人とも赤系の髪で気が強そうだし。


「おお! 強気! まあ私も三十メートル以上離れて戦っていいなら十回中八回は勝てるよ! 遮蔽物が無ければ十回中十回!」


 マリエッタは状況次第って感じか。まあ三十メートルって結構距離あるから、市街地とか宿の中とか酒場とかで殴り合いしたらホフナーが有利だな。


「私も、条件次第では一回くらい負けるかもしれないかな。でも正直、負けるイメージが思い浮かばない。あのミーフェって子、アストリッドさんは高く評価してるけど、私はそこまで優秀だとは思ってないよ。才能はある子だとは思うけど、カイほどではないかな。あ! 一応言っておくけど、カイもちゃんと頑張れば才能が伸びるってだけで、今はまだ全然だからねっ。まだまだ、あのミーフェって子の方がカイより強いよっ!」


 冷静に話していたと思ったら、急に矛先が俺へと向き、ぷりぷりし始めた。俺は、そんなに自惚れているように見えるだろうか……?


「はい。ルティナさんの仰るように、勿論、ミーフェさんより自分の方が弱いと思っています。というより、皆さんの話を聞くに、ミーフェさんはかなり強そうなので、将来的にも足元にも及ばない状態が続くと思います」


「足元……まあ今の戦闘力はそうかな。探索者としてはいい勝負かもしれないけど。あと、ちゃんと頑張れば戦闘でもカイの方が強くなると思うよ。ちゃんと頑張ればだよ。今みたいに生意気な事言ったり、狡い事しているうちは強くなれないからねっ!」


 ルティナから高評価をされたり将来性を期待されたと思ったら、最後に注意された。生意気ですみません。


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