一章9話 異世界二日目 スイと防具店
30分ほど歩いてレイル通りまでたどり着いた。最初は恥ずかしかった美少女との手繋ぎも時間の経過とともに慣れてきた……いや、たぶん正しくは、麻痺してきたので、今はもう気にならなくなってきた。
「スイさん。案内ありがとうございます。ここまできたら、もう『ラッツの守護屋』は分かるので大丈夫です」
「いやいや。ルティナにお兄さんがちゃんと装備を買うか見るように言われたから、もう少し一緒にいるよー」
「ええっと、なんか予定があるって言ってませんでしたっけ?」
「んー。今日は一日暇だから大丈夫だよー、お兄さん。それとも私と一緒じゃ嫌かな~」
嫌ではない。ちょっと距離感が独特だが、嫌悪感は感じない。あと、ここに来るまで少し話してみたが、あんまり気を使わなくて良さそうな性格で、面倒がなく、一般的に見て好感が持てる人なのかもしれない。
「嫌じゃないですよ。ただ、さっき忙しいって言ってたのと、あと、ちょっと手は放そうかなって思って」
「やっぱり恥ずかしかったー?」
「まあ……そうですね」
「おお~。偉い! 正直者のお兄さんだー」
そう言うと、スイは手を俺から放し、そしてそのまま両手でパチパチとこちらに向かって小さく拍手した。
「まあまあ、安心してよー。別に邪魔はしないからさ。むしろ、私も良い装備探すの手伝うよー」
「ああ、スイさんも探索者なんですか?」
「違うよー。私は遺跡には入らないよ。でも、遺跡に入る人達はよく見てきたから手伝えると思うよ~」
「なるほど。それなら、お願いします」
話しながらも、目的地に向けて歩みを続けていた俺とスイは、ついに『ラッツの守護屋』の前までたどり着いた。そこそこ大きな店だ。ゆっくりと店の中に入る。中には何人か探索者風の人達がいた。一部は音に気付いてこちらを見たが、俺とスイを視界に入れて、特に注目すべきところが無い事に気付くと、彼らはそれぞれ自分の装備探しへと戻った。
俺は店内を少し入った後、店の中を見回す。店内には所狭しと防具が並んでいた。無骨だが、実用的な雰囲気にどこか圧倒されてしまう。思わず口から空気が漏れた。そのまま、まじまじと店内を眺めていると、左側から服を引っ張られた。見るとスイが右手で俺の服を摘み、左手で店内のある一か所を指さしていた。
「お兄さん、お兄さん。駆け出し用はあっちだよ」
スイに導かれるまま、店の端の方へと寄っていく。そこには、「セール中、駆け出しの方歓迎」という張り紙が貼ってある木製の棚があった。棚の中に防具とそれぞれに値札が貼ってあった。だいたい金貨1枚から3枚といった感じだ。
まあ、普通に買えるな。ただ、必要かという問題もある。しばらくは1層で活動するので直近で必要は無いと言えば無いが、しかし、今後のギルドを利用していくことを考えると、普段着で遺跡を潜るのは躊躇われる。
なぜなら、俺が入手するであろう採取物はおそらく本来は2層よりも深いところから発見されるものだ。それを普段着のやつがギルドに売っていたら不自然だろう。というか、実際それでルティナには怒られたばかりだ。怒られるだけならいいが、それ以上の事になっても困るしな。
そういう意味では、偽装も兼ねて、ある程度の防具を着込んでおくのは悪くない考えだと思う。それに将来的に2層以降に立ち入る可能性もある。それならば予行練習として、防具の重さを感じながら遺跡での活動をするのも良い気がする。いきなり高いものを買うのも不自然だと思えば、このくらいの防具をとりあえず買って、明日以降身に着けるのも良いかもしれない。
……とすると、見せ防具だから、軽くて嵩張らないものが良さそうかな?
「お兄さん、もしかして、高くて買えない?」
俺が考え込んでいると、スイがそんな事を聞いてきた。
さて、なんて答えるのが正解か。
一応ルティナ視点では俺は群生地で採取している事になっている。4層で活動していたパーティーの上がりは金貨1、2枚だったかな? だとすると、この駆け出し防具はルティナ視点でも買える範囲ではあるな。いや、スイとルティナの視点が共有されるのか、という事もあるから気にしすぎかな?
まあ、ルカシャの売却情報がどの程度広まっているかの方が影響力が高そうな気もするが、そこは反省してもしょうがないポイントなので、一旦保留にしておこう。幸い、あの時買い取り窓口には俺以外の人はいなかった。ギルド職員の情報管理レベルがどの程度かという事が一番影響しそうだな――今日の昼の買い取り状況や、これまでのギルド職員との会話からして、そう低いレベルでは無さそうな気もするが。
おっとと、つい考え込んでしまった。一旦意識を目の前のスイへと集中させる。
「まあ、ちょっと値段はしますが、手が出せないことはないですね」
「ほうほう。お兄さん、駆け出しにしては、やり手だね。ルティナが気に掛けるだけあるかな」
ちょっと答え方間違えたかな。少し、修正しておくか。
「ああ、どうも。でも、結構際どい所なので、悩みますね……これ買わないって言ったらルティナさん怒りますかね?」
まあ、今の気分的に、どちらかと言うと買う気だが。できるだけ重くない物を。
「お兄さん、ここまで来て買えるのに買わないとは……慎重というか、ケチというか……」
「まあ、お金は有限なんで」
「なるほどー。ルティナはきっと怒るよ~。まあ、でも黙っててあげても良いよ」
スイはニヤリと笑みを浮かべた。
「うん? さっきルティナさんに買うかどうか確認するように言われてませんでしたっけ?」
「大丈夫、大丈夫。安心して。口裏合わせるよ~」
「じゃあ、もしもの時はお願いします」
「おー、悪いお兄さんだ~」
スイは水色の瞳を悪戯気に輝かせた。
「いやいや。まあ、買おうとは思ってるんですけどね」
「おやー? もしかして、私騙されちゃったー?」
「いやいやいや。むしろ、スイさんが、さっきから、あやふやな態度取ってるでしょ」
「まあまあ、君子は豹変するって言うしさ~。だから別に私もお兄さんも悪くないよー」
「じゃあ、まあ、買おうと思うので、ルティナさんにはそのまま伝えてもらう感じでお願いします」
「任せてー、口裏……そのままだから、口表? まあ、それっぽく話すよー」
「助かります……ちなみにお勧めとかあります?」
俺が革鎧から適当に一つ手に取り、スイに見せてみた。
「うーん、革鎧だと、値段帯的に……ラグナクの革とトロレイフ加工のコンビかなー。だから、これと、これ、あと向こうの2つあたりかな」
スイが選んだ4つはどれもラグナクの革製とあった。ふむ。
「その二つの組み合わせはどんな感じのものなんですか?」
「ラグナクは魔獣から取れた革だよ。だいたい5層から8層にいたかな? 供給の割に強度が高いから、同じ強度帯の中では安い方。重さも少し軽かったかな。魔力耐性は全く無いから、中層以降では使えないけど、今のお兄さんには合ってるんじゃないかなー。トロレイフ加工は革製の防具、特に革鎧に使う加工法。革に対衝撃系のエンチャントの残り香を塗したものだよ。最近はエンチャントの失敗も多いみたいだから、残り香も安く手に入るみたいだねー」
なるほど。そう言われると良さそうに聞こえる。というか、結構専門的な知識っぽいのによく知ってるな。それも探索者でもないのに。まあ、俺にとっては有難いか。
スイのお勧めに従い、選ばれた革鎧の中で一番軽いやつにした。ちなみに結果的に二番目に安かったやつだ。それを手に取り、防具屋の従業員の所に行こうとして、スイに話しかけらた。
「ちょっとお兄さん。革鎧だけ? 足回りもちゃんと買わないと駄目だよー。ルティナに言いつけちゃうよー」
「足回り……というか、さっきルティナさんには言わないって? あれ?」
チクらない約束だったはずでは?
「君子は豹変す~」
「ああ、なるほど。というより、足回りですか?」
「そうそう。足回り。具体的に言うとー、靴と脛当てと膝当て、あと太腿当てかな。このあたりは装備しておいた方が良いよ。足をやられて遺跡に取り残されちゃう人多いみたいだし」
なるほど。確かにそれはそうだ。頭が1層気分だったから、なんか抜けてた。いや、昼帰り組みも足回りは装備している人が少なかったし、殆どが胴体を守る革鎧だったから、ついそちらに意識が引かれたのかもしれない。彼らは2層から5層で活動していたという実績もあったため、無意識的に彼らと同じ風な見た目を選ぼうとしていたのかもしれない。
「足回りですか。確かに言われてみると身に着けるのが正しそうですね。でも他の探索者はあまり意識していなかったようですが……ああ、いやスイさんに言う話じゃないですね。すみません」
「ううん? 別にいいよー。実際、低層組では足回りは付けない人も多いからね。中層まで行ける人は皆付けてるから、やっぱりお金の問題かな。お兄さんももしかして、ギリギリ?」
さて、どうするか。まだ2層にはいかないし、見送ってもいいが……しかし、これまでの言動からスイのお勧めは役に立ちそうな気がする。一方で、あんまり金貨を散財するのは、スイやルティナ視点での俺の立場では不自然に思える。まあ、気にしすぎな気もするが。うーん、店の場所は憶えたし、ここは聞くだけ聞いて、今度買うってスタイルがバランスが良さそうな気がする。
「ちなみに足回りのお勧めは?」
「さっきとだいたい同じかなー。脛当てと太腿当てはトロレイフ加工が無い方が良いかも。膝当てはもう少し弾力性があるクルシャス製のものがいいかな」
スイのお勧めに従いつつ、足回りもいくつか目星を付けていく。一通り買うと金貨3枚と少しといったところか。そこにさらに革鎧の分を合わせたとしても、俺の手持ちの方が遥かに多い。なので普通に買えるが……色々な人の視点を考慮すると、もう少し後に買った方が良さそうかな。
「色々ありがとうございます。スイさん。ただ、ちょっと予算の関係もあるので、とりあえずは、革鎧と靴だけにしておきます。次、稼ぎが出たら足回りも整えようと思います」
「うーん……お兄さんは結構面白い人だからな~、どうしよっかな~」
スイが悩まし気な表情で俺を見る。そして、クスリと笑った。
「仕方ない、ここは私が一肌脱ぎますか」
そう言うと、スイはポケットから財布のようなものを取り出し、中から金貨を3枚取り出して、俺に見せた。
「お兄さん。ここに金貨があるよー。欲しいー?」
……いらない。
いや、というか……いや、なぜ? 俺が固まっていると、スイは、ニヤリと笑みを浮かべて、両手をこちらに向けると、じりじりと俺の方へ近づき始めた。
「お兄さんは、だんだん金貨が欲しくなーる。だんだん、欲しくなーるー」
そして両手を俺の方に向けながら、おかしな言葉を唱え始めた。
いやいやいや、なんでだ? さすがに受け取れないぞ。俺がこの世界に来てすぐの時とか、困ってた時ならまだしも、今の様に金があるときに受け取ることはできない。
「お気持ちは凄く嬉しいですけど、いいですよ。スイさん。結構次の稼ぎには自信がありますから」
「お兄さんは、だんだん金貨が欲しくなーる。だんだん、欲しくなーるー」
スイは俺の言葉を無視して、おかしな言葉を唱え続ける。
「えっと、スイさん……?」
「むむ、洗脳が効かない……!」
今の洗脳だったのか……いや、これで洗脳される人はいないだろう。
「本当に大丈夫なんで」
「んー、でも、遺跡は本当に危ないよー。ここで買っといた方が良いよ。利息は1日、100%でいいからさー」
利息とるんかい。しかも超暴利!
「利息100%はちょっと……」
「じゃあ、返さなくていいよ~」
両極端だな……というか、何で、金まで渡そうとするんだ? こんな初対面の相手に。親切すぎないか。
「いやいや、頂けないですし、それに借りません。自分で何とかできる見込みはあるので、大丈夫です」
「うーん……そうだ! なら、こうしようよ、お兄さん。私がお兄さんに足回りの装備を買ってあげよう。その代わりに、お兄さんは明日から朝の礼拝に参加してもらおうかな」
「礼拝……?」
「そうそう、礼拝、礼拝。クリスク遺跡街の南側に教会があるんだ。お兄さんは明日からそこで、私の朝の話し相手……もとい礼拝に付き合ってもらおうかな。これなら、お金を渡したことにも、貸したことにもならないし、お兄さんも納得でしょー」
スイは何か宗教に寄与しているようだ。俺は特に何らかの宗教には所属していないが、宗教やその行事や儀式などは別に特段嫌いではない。だから、この提案は朝の時間を拘束されるという点を除いて俺にデメリットは全くない。むしろ、こちらの宗教事情や習慣を知れる良い機会かもしれない。
その上、スイの言動から、かなり俺を気遣っていることがわかる。俺が金のやり取りに大して罪悪感を抱かないようにしようとしているのだろう。俺が拒んでいる理由は本質的にはそことは少し違うところにあるのだが、それは俺にしか分からない事だ。
ここまで親切な提案をされると、それを拒むのも気が引けるが、やはり、俺自身かなり金を持っている事と、何より、ここまでしてくれている相手に対して隠し事をしている事から、さらに金を受け取るというのは、親切な提案を拒む以上に気が引ける事だ。
こんなことになるのなら、変に所持金の不自然さなど気にせずに、そして、もっと正直に動くべきだったのかもしれない。俺はどうにも、人を疑ってかかっている。性分だから、仕方が無いが、良くないことかもしれない。
「スイさん。本当に気遣ってもらって、嬉しいのですが、そんなに俺に有利な提案はなかなか受けにくいです。いや、本当に有難いのですが……」
「むむむ……? さては、お兄さん……朝が弱いのかな? 朝の礼拝が嫌なら昼でも夕方でもいいよ~。なんなら懺悔室でもいいよ。クリスクの教会は懺悔室も多いから、お兄さん用に空けておけると思うよー」
なんか、本当に気まずくなってきた。いっそ、受けてしまうか。いや、さすがにそれは……ん? 懺悔室を空けるって表現ちょっと変じゃ……んんん、もしかしてスイは一般信者ではないのか?
「朝は確かに強くはないですが、そこではなくて……いや本当に大丈夫ですから、というより、その条件ならお金を借りる方をむしろ選びます。利率100%でいいので」
「えー。それを選ぶのは無いでしょ。絶対返せなくなっちゃうやつだよー。私がわるーい人なら、『お兄さん、今日中に金貨50枚返さないと、怖い聖女に突き出すぞー』とかやっちゃうよー」
「聖女……? いや、とにかく受け取れないものは受け取れないですよ」
「強情なお兄さんだなー。嫌いじゃないけど、さすがに面倒になってきたよ。ええい、こうなれば奥の手っ!」
そう言うとスイは持っていた金貨を俺の服ポケットに無理やり詰め込もうとしてきた。力技すぎる。
抵抗しようとするが、スイは一瞬で俺の背後へと回り、片手で簡単に俺の両腕を後ろで抑えてしまった。そして、あっ、っと驚く間もなく、ポケットに3枚の金貨を入れられてしまった。
「ちょちょちょ、スイさん。強引ですよ。強引」
背中にいるスイに抗議を送る。
「世の中、力こそが全てなのだ~」
「いやいやいや。やっぱり受け取れないですよ」
「なら、お兄さん、頑張って拘束を解いてみせてよー。それだけの力があれば、私もお兄さんを認めて遺跡に送り出せるよー」
それは無理では? スイは見た目通りに華奢な少女ではない。凄まじい怪力の持ち主だ。しかも、今の動きから、なんらかの武術をやってそうだ。そういったものがからっきしの俺でもはっきりと実力差が分かる相手だ。学生時代の俺の友達に黒帯がいたが、この少女は普通にそいつより強いだろ。
「これは無理ですよ。スイさん」
「ならば、諦めて私の言う通りにするのだー。世の中は焼肉定食。力が弱い者は強い者の言う事を聞くしかないのだよ、お兄さん」
「……弱肉強食?」
「世の中は焼肉定食。強い肉も弱い肉も私が食べるのだよ。お兄さん」
この間も、試しに抵抗してみたが、びくともしなかった。この店に来るまでのやり取りで分かっていたが、固すぎる。無理だ。諦めよう。
「わかりました。お金はお借りします。必ず返します」
「よしよし。やっと素直になったねー、お兄さん」
そう言うと、スイは拘束を解いた。あれだけ強く固められていたが、全く痛くない。やはりスイは何か特殊な技術を持っているのだろうか。俺が考察をしていると、さらにスイが声をかけてきた。
「あ、それと、返済はいつでもいいからさー。気長に、返せるときでいいよー」
「できるだけ、早めに返します」
俺の精神衛生のためにも。
「むむー、やっぱり強情なお兄さんだ。ここは、もう一度分からせるべきか。うーむ」
不審な事言っているスイに戸惑いつつも、俺は革鎧の他、足回りの装備も集めて、店員のところへ向かい、購入手続きを行う。スイから借りた金貨と手持ちの金貨を合わせて会計を済ませ、再びスイに合流した。
「買ってきました」
「うむうむ。これでルティナにも、ちゃーんと報告できそうだよ。そういえば、お兄さんはこの後どうするの?」
『ラッツの守護屋』を出て、時間を確認すると、そろそろ日が落ちそうな時刻になってきた。つまり夕方組の帰還時刻だ。思ったより店に長居していたようだ。
「ええっと、この後は、ちょっとギルドの方に向かう予定です。スイさんは?」
「私は日没の礼拝かなー。まあ、参加しなくてもいいんだけどねー」
なんか適当だな。緩い感じの宗教なんだろうか……?
「なるほど……今日は、色々と教えて下さってありがとうございます。お金の方も早いうちにお返しします。えっと、すみません、住所とか会える場所を聞いてもいいですか?」
「おー? お兄さん、もしかして、私の事が好きになっちゃったかなー?」
「いや、えっと、返済の時に会える場所を聞きたくて」
「もー、真面目なお兄さんだなー。……住所か。うーん。クリスクの教会に来てもらえば会えるよ。司祭様に『スイはいませんかー』って聞いてくれればいいよ」
やっぱ、これって……
「スイさんって、シスター的な感じの立場の人……? なんですか?」
全然見えないけど。あ、でも彼女が着ている黒色のローブも聖職者の服に見えないこともない。それに、ゲームとかだと僧侶って力強いイメージあるし、そういう感じなのだろうか。
「違うよー。でも惜しいかな。今度、教会に来たら教えてあげよ~。だから、お兄さんも教会に、朝の礼拝に参加するのだー。そして私の話し相手になるのだー」
それさっきも言ってたが、建前ではないのか? もしかしたら純粋に話し相手を欲しているのだろうか? まあ、今までの感じからすると、スイは、人と話すのが好きなタイプなのかもしれない。
「ええ、分かりました。明日伺います。何時ごろがいいですか?」
「何時でもいいよ~。朝の礼拝なら、8時くらいがいいかなー」
やっぱし緩い宗教なのか……?
「わかりました。ではその時にまた」
「うん。またね。お兄さん」
そういって、スイと別れた。何と言うか独特な少女であった。かなり親切な少女であったが、その親切心の理由もよく分からなかった。いや、単に誰に対しても親切な人なのかもしれない。宗教関係の人のようだし、そう考えると、不思議ではないのかもしれない。今度、礼拝に行ったとき、宗教回りの勉強もできたらしておくと良いかもしれないな。しかし、魔道具店を見ようと思ったら防具を買う事になるとは、人生とはよく分からないものだ。