俺様盗賊は勇者にならない 1
「ここかー? 例の勇者の剣があるって噂の洞窟は」
一人の少年盗賊が洞窟へと忍び寄る。洞窟の中には金銀財宝が山のように散りばめられていた。が、その近くに巨大なドラゴンが寝息を立てていた。
「バカは金貨狙って音立ててドラゴンに喰われるからな、俺はクレーバーだ、目的の剣だけ盗んでおさらばだぜ」
洞窟の最奥部に剣がささっている。その煌めきは明らかに普通の剣ではない。紛れも無い勇者が持つべき剣であった。
「へへっ、これを勇者候補に売りつければコネと金が手に入るぜ!」
剣を引き抜く少年盗賊。剣を引き抜いた瞬間、脳裏に直接声が聞こえた。
「あなたが次の勇者ですね。私の声がきこえますか?」
「は? 剣がしゃべった? はたまた俺の頭がいかれたか?」
「いえ、私が話しかけてます。勇者よ。よくお聞きなさい私のお告げを」
「剣が喋るとなればより希少だな、高く売れるぜ」
「私を売る前提の話はやめてください勇者よ」
少年盗賊は嫌々ながらも剣のお告げを聞く。
「まずはこの国の王に認められ、国外に行く手だてを得てください」
「やだよめんどくさいし、俺は盗賊だぞ?」
「その行く末にはあなたは大金も栄誉もお嫁も手に入りますよ」
「その話詳しく聞こうじゃないか。特にお嫁に関して」