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【物語詩】山姥の孤独
山姥は寂しそうに
ひとり寂しそうに包丁を研ぐ
誰も訪れてくれる人間がいない
だれも食べられに来てくれるお客がいない
わたしは恐ろしいものだと思われているのだ
人間たちから嫌われているのだ
食べられるのは痛いものだと思われているのだ
食べられてみればわかるのに
痛みなんて最初だけで
あとはお口の中で甘く溶けるのに
包丁で切られるのは痛いものだと思われているのだ
痛くしないように研いでるのに
切られたことすらわからないほどの切れ味にしてるのに
お願いだ
人間さんたち
わたしを嫌わないで
わたしたちは友達
猫が小鳥を愛するように
獅子がインパラを慈しむように
愛してあげるから早くおいで
でないとわたし
寂しさで死んでしまう