【パクリ詩】愛はズボーン!
夕陽を見にいった帰り道、父さんがはしゃぎな
がら僕に言った言葉を覚えてる。
──愛はズボーンなんだぜ!
確か大人の世界を垣間見てしばらくの頃だった
と思う。その言葉に恥ずかしくなって、顔をそむ
けた僕に、父さんは凄い目玉を血ばらせて、しつ
こく、しつこく言ったのだった。
──愛はズボーンなんだ、ヒロシ! こう、
ぶっとい力で腰を支えて、ズボーン! ズボー
ン! ズボーンなんだ、ヒロシ!
──やっぱり愛はズボーンなんだね
僕は冷めた視線を夕焼けに向けて、そう言った。
夏の日が落ちるのはゆっくりだった。夕陽に照
らされて無数の蜉蝣が飛び回っていた。
それをかき分けるように、一人の女のひとが歩
いてきた。とても安産体型の美人さんだ。
僕は心配になって父さんがズボーンしないよう
に止めるつもりで、振り返った。
──蜉蝣には口がないんです。成虫になってす
ぐに死んでしまうから、必要ないんですよ。人
間の男性にも必要のないはずの乳首がついてい
るというのにね。さあ、そういうわけで……それ
ではズボーン!
遅かった……
女のひとの首の上まで埋まった父さんのズボーン!
教科書にも載っている吉野弘さまのアレとはまったく関係ありません。