【歴史小説】こむいでん
約三百年前、こむいは勝手に産まれた
姉さんはいたが、母さんはいなかった
父さんは知らない
誰も見てない暗い森で、誰も知らない醜い巨人が赤子を抱き上げたところを森の小鳥が見てた
それがこむいの初めての記録
「おおー、こむい!」
巨人は赤子を振り上げて、神の名を叫ぶように、そう言った
「おおー、こむい!」
それを聞いていた近くの川で洗濯をしていた姉のゴーは、思った
「ああ、あの赤ちゃんの名前は、こむいなんだな」と
だから赤子の名前はこむいと決まった
巨人がそのままムシャムシャと食べるかと思ったらゴーにそっと渡して来たので
ゴーはそのままなんとなく、こむいを家に連れて帰った
こむいはイケメンに育った
ちょっと女の子にも見えてしまうほどの妖艶なイケメンだ
まだ11歳なのに
しかも修行をしてニンジャになっていた
ゴーは毎晩のように、こむいにいたずらをした
寝ているこむいの着物の前をはだけさせると、そこに木の蜜を塗りたくり、べろべろと舐め回した
こむいがイケメンに育ったせいだ
そう心で呟きながら、ちゅっぽん、ちゅっぽんと、あちこち吸った
「うう……ねえさん!」
こむいは寝言をいった
やがてふたりは大きくならずに、飢饉で死んでしまった
伝説には、ならなかった
現実とはそんなものである
見も蓋もねぇ……m(_ _;)m