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【ブラック純文学】カラスより黒いものはない
確信した、彼女は人間ではない。
黒いドレスを翻し、黄色い唇が艶めかしく笑う。
こんなに汚れた人間はいない。
それでいて純粋無垢なふりをして、
煤けたような顔から私を見下す瞳を向ける。
長い黒髪を手で揺らすと、言った。
「あなたはまるで鳩ポッポね」
平和ボケしているとでも言いたいのだろうか。
日本の学生が平和ボケしていたらいけないとでも言うのだろうか。
身を包む黒いセーラー服よりも彼女のほうが黒い。
きっと彼女は何かよくないことを、そのうちやらかす。
そんな気がしてならなかった。
私は聞いてみた。
あなたは悪魔なのかと。
すると彼女は哄笑し、教え諭すように私に言った。
「阿呆ー、阿呆ー」と、闇を揺るがす声で。
そして真っ暗な廃坑の中へと入っていった。
暗闇の中に、彼女の影が、黒く浮かび上がって見える。
私は確信した。
カラスより黒いものはない、と。