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【詩】反転する夜のたぬき
私のような
たぬきが
アスファルトで潰れていた
たぬきのような
私は
赤い月に濡らされ
国道を
走っていった
見慣れぬ乗り物にのせられ
走っていった
遥か眼前に
開いたトンネルへ
突き進んでいく私を
私は見送った
アスファルトの上から
運転席に
たぬきケーキのような
上半身黒と茶色の私が見えた
トンネルの中には
炎が燃え盛り
炎の中には
トンネルが開いていた
あの私は
未来へ前進しているつもり
過去の目玉が
真正面から見つめているとも知らず
アスファルトから
潰れた身体を引き剥がし
私は起き上がる
ばりぬばり
ばりぬばりばりくちつと
赤い夜に
黒く空いた満月
飲み込まれぬように
たぬきは化けるのだ