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★【現代恋愛?】ネコミミ少女ねこみちゃん

 僕の従姉妹のねこみちゃんはちょっとだけ変わっている。

 頭の上にふたつ、ネコミミがついている。

 ただそれだけなのだが、それだけのことで彼女を好きな者と嫌いな者が激しく分かれる。



 僕はねこみちゃんのネコミミが大好きだ。

 それがねこみちゃんの頭の上についてるのがとても似合ってる。

 ふっと息を吹きかけるとピクッ、ピクッと動くのもたまらなくいい。

 もし僕のスチールたわしみたいにゴワゴワした髪の毛からアレが生えてても絶対に似合わない。彼女のふわっとした頭だからこそ似合うのだ。

 親族で唯一彼女の頭にだけネコミミが生えたことを、僕は心から嬉しく思っている。



 僕とねこみちゃんは昔から仲良しだった。

 今でも奇跡的なぐらいにそれは変わってない。

 正直昨日から僕はとてもドキドキしている。

 ねこみちゃんの住む町にある私立大学に受験に行くのだが、そのため叔母さんつまりはねこみちゃんの家に泊めてもらっているのだ。


「おはよ〜」


 朝、洗面所で顔を洗っていると、後ろからパジャマ姿のねこみちゃんがやってきた。


「お、おはよう」

「受験、今日だね〜、馳兄。がんばって」

「お……、おう」

「あたしも来年は同じ大学受けるから。先輩よろしくって言わせてね」

「おっ……、おう!」

「正直、環境が新しくなるの不安だから、馳兄に一緒にいてほしいの」


 彼女の表情は変わらなかったけど、歯磨き粉を押す手の力が弱々しく見えた。


 ぽつりと呟く。

「猫嫌いって、多いから……」


 そう。信じられないことに、彼女のことをただのケモミミヒトとしか見られないやつは多いらしい。

 その代わり魅惑のネコミミ少女に見えてしまう者にはこれ以上ないほどに魅力的に見えるのだ。

 僕にはもちろん後者に見える。誰よりもだ。彼女が幼い頃から見てきたのだ。


 ふいに、ねこみちゃんが言い出した。


「昨日、寝込みを襲われてさぁ……」

「えっ!? ネコミミを襲われた!?」

「うん。翔太しょうたに」


 あの糞ノルウェージャンフォレストキャットめ。なんてことをしやがる。


「おかげであんまり眠れなかったんだよね」


 そういえば目つきが眠たそうだ。

 僕は優しく聞いてあげた。


「ネコミミは大丈夫だった?」

「なんで?」


 きょとんとした表情でこちらを見上げる。

 台所で叔母さんが朝食の用意をしていて、コトンとか音を立てるたびに、ねこみちゃんの耳がレーダーのようにそちらを向く。


「ネコミミを襲われたんだろ? 傷でもついてない?」


 僕はこの好機を逃さず、彼女の後ろに立つと、やわらかくて艶々な頭と一緒にネコミミを撫でた。


 ふんわり


 ふわふわ〜……



「ちょ……、ちょっと馳兄?」

 なんだか遠くからねこみちゃんの呆れたような笑い声が聞こえてくる。

「どうしたの? 大丈夫?」


 気がつくと僕は床にばったり倒れていた。

 どうやらあまりの幸せに失神してしまったようだ。


「なんか馳兄……。変わったよね」


 彼女の目が汚いものを見ているような気がして、僕は慌てて身を起こす。


「なっ……、何も変わってないだろ? 何が変わったって思うの?」

「なんかあたしを見る目がエロい」

「そっ……! そんなことはない!」

「ちゃんと昔みたいに、猫かわいがりしてくれてる?」

「してるしてる!」


「ふぅん……」

 なんだか僕の心の中を見透かすような笑いを浮かべて、逃げるように立ち上がった。

「馳兄って……。猫が好きなの? それとも、女の子が好きなの?」


 そう言われて、僕の中の何かがぷつんと切れた。


「僕はねこみちゃんが好きなんだ!」


 気がつくと抱きしめていた。


「そっか……」

 ねこみちゃんは安心したように、僕の胸に顔を埋めると、ゴロゴロと喉を鳴らし出した。

「それなら、いいや」




 受験は失敗した。

 ねこみちゃんのために絶対に受かりたかったのに。

 勉強以外のことの妄想で頭がいっぱいになってしまって……。


 来年、また同じ大学を受けるつもりだ。

 彼女をいじめる悪いやつから守らなければいけないし、彼女に夢中になって発狂する猫好きからも守らないといけない。


 来年こそは絶対に受かってみせるぞ!


 そのためには彼女の家には泊まってはいけない!


 頭がネコミミでいっぱいになるからな!


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― 新着の感想 ―
[良い点]  これ、なんで「失敗」なの??  先生の中では「なにか足りない」んですかね??  私は好きですよ……ネコミミ!!  こいつら相思相愛じゃん!!
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