★【異文化交流】私は宇宙人が理解できますか?
「できるかいっ」
私がそう言うと、目の前の宇宙人は寂しそうな顔をした。
ソフトクリームのような髪が秋の風に揺れる。
でも、ごめんなさい。いくら私が地球人の中で浮いているやつだからといって、宇宙人を理解することはやはり、無理だった。
正直かわいいとも思えないし、魅力もあまり感じない。何しろ皮膚が泡のように溶けている青白い生き物なんて、地球じゃカマキリの卵ぐらいしか見たことない。
「ふりーむ……」
宇宙人は私の機嫌をとるような声で言った。
「ふりーむ、くりーむ、どりーむ」
「ファンシーだとは思いますよ」
私は彼(彼女?)の心の傷をなるべく癒そうとする声音で言った。
「でも……あなたの言うことはさっぱり意味がわかりません」
「くりーむぅ……」
宇宙人はピンク色のまつげを白い口にくわえながら、笑った。
「ワタシハ・トテモ・カナシイデス」
「戦争になりますか?」
私は心配して、聞いた。
「地球人代表の私との間で会話が弾まなかったからには……」
「戦争デス」
宇宙人は楽しそうにくねくねと踊りながら、嬉しそうに言った。
「白いクリームをたくさん地球の上から振りまいて差し上げましょう」
「急に地球のことばがお上手になりましたね」
私は友好的に握手を求めた。
「今のあなたとならふつうに会話が成り立ちそうだ」
宇宙人がイカのような手を振り上げ、私が差し出した腕をズバン!と切断した。
「痛い!」
「イタイノ?」
ムカつく上目遣いで見上げてくる。
「イタイノ? トンデケ」
「この野郎! ふざけるな!」
私は思わず反対側の手で宇宙人を殴り飛ばした。
宇宙人はくるくると縦回転で飛んでいくと、床に頭から突き刺さった。ビヨヨヨヨ〜ンという音を立てながらお尻が激しく揺れている。
そのお尻から、ふわっ、ふわっというように、白い綿毛があたりに飛び散った。
理解してやろうと思ったがもうだめだ。
私は切断された腕を自分のお尻にくっつけると、それを激しく振り回しながら宇宙人にバック走行で突撃していった。
宇宙人は股間から新しく顔をにょっきりと出すと、口を大きく開けて私と握手をした。
宇宙人の綿毛が地表を覆っていき、あっという間に世界は生クリームのように崩れていった。
『執筆中小説』あとひとつ!