★【ぽえみっく・わーるど】天使の屑
ここからは書き下ろし失敗作を投稿して行きます。
その時でした、空から天使の屑が降ってきたのは。
「ほええええ!」
モ作は私と並んで、仰天しながらそれを見つめました。
小さいものははらはらと、中には少し大きなかたまりもあって、それは突き刺さるように落ちてきました。
「モ作さんの身体のどこかに突き刺さってやる!」
天使の屑は憎らしげに唸りながら、尖った恨みをこちらに向けて落ちてきます。
時は慶長二十五年。
「いや! 慶長は二十年経たずに終わってるから!」
そんなうるさいことを誰かが言いますが、聞く耳は持ちません。
「元和だから!」
安土桃山時代から江戸時代へとう売り代わったこの時代に、モ作さんは転生してきたのでしな。
「う売り代わったってなんだよ! 移り変わっただろ!」
このツッコミを入れている誰かこそがモ作さんでしな。
「でしなってなんだよ! ニシナかよ!」
そんなローカルなスーパーマーケットの名前を言われても……。
さてかつおぶし。
モ作さんはかつおぶし職人です。
彼の削るかつおぶしは、日本一薄く、味はしかしそれほどでもないという評判でしな。
じょりじょりと削るモ作さんのかつおぶし。
空に舞い上がっていくモ作さんのかつおぶし。
やがてそれは雲を形成して、大地に降り注ぐのですが、その前に……
雲を見つけて天使たちがパタパタと、やってくるのです。
天使たちは雲が大好物なのでした。
わたあめのする甘い甘い雲を見つけて食べにくるのです。
「わっ!」
「これ……、へんな味!」
天使たちはかつおぶしの雲を食べてしまいました。
ショックを受けた天使たちは、かつおぶしの毒にやられ、バラバラに砕けて、雲の上に散乱し、やがて重力の魔に乗せられて、地上へと落ちていきました。
モ作さんは裏稼業の殺し屋に依頼をしました。
恨みがつのるあまり、とうとうそんなことに手を出したのです。
「語り手め! おまえに天罰をくだしてやる!」
そう。ターゲットは私だったのです。
殺し屋には『雨手裏剣のテツ』が選ばれました。
雨のように空から手裏剣を降らせてターゲットを殺す芸術家です。
私は嫌がりました。
いえ、死ぬのはべつにいいのです。この物語を書けなくなるだけのことですから。
それよりも、この物語が殺伐とした、ぽえみっくとは程遠いものにされるのが嫌だったのです。
「フフフ。語り手め。このワシを馬鹿にしおったゆえ天罰がくだるのじゃ」
そう言いながらモ作さんはかつおぶしをひと削りしました。
削りながら、私を亡き者にできる喜びに、空を見上げました。
私は隣に並んで、一緒に空を見上げました。
その時でしな。
ああ……ぽえみっくなものが降ってきたよ!
モ作さん、ざまぁ!