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他人と通じ合えたことなんて記憶にないんだ
久しぶりに町を歩いた。
何十年ぶりだろう? いつも自動車やバイクを使っていたのでまるで世界の見え方が違う。忙しい毎日から解放されて、広くて何もない海に投げ出されたようだった。もちろん実際には色んなものがある。でも私には、何もないに等しかった。
何も言わず、黙って歩いている人がほとんどだ。たまにすれ違う仲良しらしいおばさんたちも、私のいない世間の話を交わしている。
他人と通じ合えたことなんて記憶にないんだ。
だって私は幽霊だから!
なんだそりゃ……