【SF】ネコメン
私たちは知らない
自分がどこから来て、どこへ行くのかを
しかしネコメンは知っているらしいのだ
もやもやとしたアメーバの海の中で暮らす彼らは
自分たちがどこから来て、どこへ行くのかを
知っているのだと言う
私はネコメン1号ボーティキャフトに取材を取りつけることに成功した
私が目隠しをされ、車で何時間も運ばれ、黒い世界を見えない誰かに腕を掴まれながら歩き、広く明るいアメーバの海の中の一室に入った時、ボーティキャフトはソファに寝そべり、毛糸玉をころころと転がしながら、入って来た私を見て固まった
彼女はどう見ても人間の、しかも芸能人のかわいい女の子にしか見えなかった
ショートカットの前髪を揺らし、ソファから立ち上がると、面倒くさそうに、また寝そべった
「なんか用なぁ?」と、ボーティキャフトは甘ったるい声で言った。
私はネコメンを初めて見た興奮を抑えながら、上着のポケットから名刺を取り出した
「私はこういうものです」
「そういうものかぁ」
ボーティキャフトは名刺を受け取りもせず、毛糸玉を弄びながら言った。
テレパシーで見透かされているのか、それともただ面倒くさいだけなのか、後者なのが丸わかりだった
(未完)