【現実恋愛】『.から始まる恋もある』
彼への想いに遂にピリオドを打った。
彼にはやっぱり、あのこだけしか見えていないと、痛感したからだ。
私が好きなのも、そんな一途な彼だけだったからだ。
私と彼の接点はただひとつだった。
同じ文芸部。それだけだ。
もし退部してしまったら、もう共通の話題など何もない。
私は彼のことが好きなのだろうか。それとも彼の書いた、あの小説が好きなのだろうか。
彼の書く物語と、彼は違うものだろうか。
「おー、高柳。彼女とうまくやってる?」
部室で執筆をしている彼の背中を、わざと明るくフレンドリーに叩いた。
彼は少しびっくりしたようだったけど、私が表向き誰にでも仲良くできるキャラだとわかってるようだ。
ほんとうは私、こんなキャラじゃない。君と気軽に言葉を交わせるように、こんな自分を作ってる。
「彼女って……、まだそんなんじゃ……、っていうか話すらしたことないって」
高柳が頬を赤らめて、そう言う。
やっぱりかわいい。でもピリオドは、もう打ったんだ。
「もー……、まどろっこしいなあ。あたしが手、貸したろっかぁ〜?」
彼の恋を応援するって決めたんだ。
自分の恋には無理やり気味のピリオドを打って。
「いっ……。いいよっ! ほっといてくれ!」
「でも、ほっといたら永遠になんにもしなさそーじゃん?」
── 中断 ──
これは結構新しい。8/18のお昼にここまで書いて放置していた。
タイトル通り、恋を諦めたことから恋が始まるみたいな物語を書こうとしていた。
彼を諦めて、『あのこ』に一途な彼を応援して、いつも側にいたらいつの間にか自分と彼の恋が始まっていた、みたいな。
しかし、書いている途中で何も浮かばなくなった。
主人公の気持ちになれない、彼の気持ちがわからない。
物語が動き出さない!
なんで彼は一途だった『あのこ』を追いかけるのやめちゃうのー!?
何も考えてなかった。
はっきり言って、タイトルに『.』の入ったものが書きたいという気持ちだけで書き始めた作品だったのである。
よし、無理やり終わらそう。
── 再開 ──
私が思っていた通り、彼は永遠になんにもしなかった。
宇宙を漂流しながら、私達は見つめ合う。
にこっと私が笑いかけると、彼も照れくさそうに、笑った。
「あたしにしとけよ」
私が無重力でそう言うと、
「おまえでいっかぁ……」
彼がそう言ってくれた。
そうして私達は時の止まったような宇宙空間を、真っ赤に膨れ上がりながら、永遠に漂っていった。
(了)
──
なんでSFになった!?Σ(゜Д゜)