★【冬のホラー企画2失敗作】転生してみたら雪女の子どもだった件
『ようこそ、転生と選択の部屋へ』
頭の中に響くような声で、白ひげの老人が言った。
俺は白い部屋に立っていた。
俺は、死んだのか?
記憶を辿ってみると、確かに飲酒運転の女が運転する大型トラックに轢かれ、女は轢いたことにも気づかず走り去った絵が再生された。
家族に……もう、会えない。
うるさかった母親と無関心だった父親、俺を汚いものでも見るようにいつも見ていた妹──
すぐにあいつらどうでもいいやと思い、俺は万歳すると、神様らしきその老人に聞いた。
「俺、転生できるんッスね!? わあい! 新しい人生だ! 異世界だ! ハーレムだ!」
『選択するのじゃ』
神は言った。
『二択じゃ。ふつうの家庭の子どもと、雪女の子ども──どちらを選ぶ?』
「そ……、それしか選べないのですか?」
『二択じゃ』
えー……?
俺は不満だった。
転生するなら異世界の貴族の息子で、夢はハーレムでしょうが。
ふつうなのは嫌だし、雪女の子どもなんてもっと……
待てよ?
雪女といえば美人だ。
そんなお母さんの子として産まれて、冷気で人間を殺せるようになるっていうのは、考えてみればなかなか魅力的じゃね?
俺は即答した。
「雪女の子どもで」
母さんは『雪男』みたいな意味での雪女だった。
体が白くて厚い毛に覆われ、顔はどう見ても猿だった。冷気を操る能力などもなく、単に寒さに強いから山奥に棲んでいるというだけらしい。
鼻をほじる母さんの胸に、犬のように6つ並んだ乳首があった。そのうちのひとつを吸いながら、失敗したなと俺は思っていた。