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★【エッセイ】宇宙人の苦労話
『パイレーツ・オブ・カリビアン』をみんなが面白いと言う。
私にはちっとも面白くなかったのに。
やっぱり宇宙人である私には、地球人の面白がるものはわからないのだろうか。
月が怖い。
夜空に浮かぶ月を目にすると、恐怖に襲われて、ついつい下を向いてしまう。
雨上がりで、水たまりに月が映ったりすると、びくんと背筋が凍る。
でっかいギョロ目玉に上から見下されているような気がして、自分が不自由な奴隷にされてしまったみたいで、身が竦むのだ。
やはり月に私の女王様でもおられるのだろうか。
彼女に虐げられた前世の記憶がそうさせるのだろうか。
宇宙人はつらい。
夢、ということばが嫌いだ。
夜に見る夢ならいいが、『夢をもとう!』『夢があるっていいもんなだよな』とか聞くと、ちょっと吐きそうになる。
理由はあれこれ考えたが、それを説明したらきっと引かれる。
「やっぱあんた、宇宙人だわー!」と指さして言われそう。
なので、言わない。
宇宙人は宇宙人なので、地球人とはわかり合えないと諦めて生きていく。