★【現実恋愛】ちくびあてゲーム
初めて遊びに行ったナオの部屋は、スポーツの匂いがした。
その男らしさ溢れる部屋に、ボクは早速の後悔と、じわじわ胸の中から溢れる期待感に、同時に見舞われていた。
「ま、好きなとこすわれよ」
そう言うとナオは、床のカーペットの上にあぐらを組んで座る。
ボクの座れるところはナオのベッドの上しか、なかった。
出されたマグカップのココアで赤い顔をかくしていると、ナオが色々と話をしてくる。
火星探査機の話とか、魚釣りの話とか、まったく興味のない話にもボクは夢見心地。
でもずっと緊張が解けないでいることに気づかれたのか、ナオがこんなことを言い出した。
「なあ、レン。ちくびあてゲームしようぜ」
「ちー……ちく……?」
「チーちくじゃねーよ。ちくび。ちくびの場所を服の上から当てんの」
「や……っ!」
ボクはココアが少しこぼれるのも構わず、急いで自分の胸を隠した。
「心配しなくてもそうそう当たんねーって。特におまえは難度高けーしな」
ナオの言葉に少しムッとしてしまう。
確かにボクの胸はぺったんこだ。
痩せててガリガリで盛り上がりのひとつもない。
でもそんな言い方しなくたっていいじゃないか。
開き直ったようにボクは胸を守っていた腕を解くと、真っ赤な顔で挑発した。
「や……、やってみてよ」
「いいんだな?」
ナオの顔が嬉しそうに笑う。
「よーし……」
ダーツを構えるように、人差し指を構えた。
片目をつぶり、舌をペロリと出しながら、ボクのちくびのありそうな場所に狙いを澄ます。
「ここだっ」
つん! と、ナオの指先が、服の上から、ボクのちくびに直撃した。
「あッ!!」
身体の中を電撃が走ったような感覚に、おもわず色っぽい大声を上げてしまった。
「あたりー!」
ナオがはしゃいでる。
「や……やったな!」
あまりの恥ずかしさと嬉しさに、ボクはつい大胆になってしまった。
「な……、ナオのちくびもあててやる!」
「やってみろよ」
愉快そうにナオが腕を広げ、胸を前に出す。
「あてられるもんならやってみろ」
そんなの簡単だった。
ボクのと違って、ナオの胸はふっくらと盛り上がり、先端の位置なんか予測するまでもない。
「ここだーっ!」
つん! という感触とともに、ぷにょん! とナオの胸が揺れた。
「あ……きゃっ!」
男まさりのナオが珍しい声を上げる。
それはナオが女の子だということを強く意識させてくれる声だった。
その声にボクは、してはいけないことをしてしまった背徳感に、ひしひしと自分が男なんだということを、思い知ってしまうのだった。