表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/249

【ホラー】屠殺

 目が覚めるとひどい匂いがしていた。


 接待を受けていた部屋とは違っていた。床も壁もコンクリートの殺風景な広い部屋で、私は縄に吊るされて()()()()になっていた。


「ありゃ……。起きちゃったか」


 男の声が死角から響いた。

 響いた声はすぐにコンクリートの壁に吸われて冷たくなった。


 私の見えるところまで歩いてくると、男の顔が見えた。街で私に声をかけて来た、あの男だった。綺麗な髭が狼を思わせる、色気のある目をした男だ。


「お姉さん、あのまま眠ってたほうがよかったのに」


 そう言って、手に持った大きな包丁のようなものを、トントンと自分のてのひらで打ち鳴らす。


 私は声が出なかった。


 額に銃のようなもので何かを撃ち込まれたのを覚えている。たぶんあれのせいだ。全身が麻痺して動かない。


「びっくりしたかい? 目を覚ましてみたら、こんな所にいて?」

 男は親切に私に教えてくれた。

「人の肉を食べたがっているお客さんって、結構いるんだよ。俺は食べないけどね。カネになるからやってる。申し訳ないけど、美味しいお肉になってもらうよ」


 もう一人、背の高い男が部屋に入って来た。


「彼が君を屠殺する。俺にはとても出来ないからね」

 髭の男は優しく笑う。

「俺には君が人間にしか見えない。豚や牛にはとても見えない。しかし、彼には君が食肉にしか見えないらしいんだ。とりあえず俺はこれで失礼するよ」


 そう言うと、背の高い男に包丁を手渡し、また私のほうへ振り返る。


「さよならだ。最後の俺の仕事はコイツだ」

 お尻のポケットに入れてあった大きな銃のようなものを、再び取り出した。

「ストレスを与えると肉がまずくなるんでね。すべて忘れて、リラックスしてお休み」


 彼が私の額に銃をあてる。


 そこから電撃のようなショックを私の脳に撃ち込むのだ。


 しかしそれよりも早く、背の高い男が銃を奪い取ると、髭の男の額にそれを押しあて、銃爪を引いた。


「大丈夫か、ジェニー」

 デイヴは私の縄を解きながら、謝った。

「すまん。遅れた。危ないところだった」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 「屠殺」って言葉好き。  だからこそ!  完全版を求めます。  海外ドラマの新番組特集で、第一話の冒頭シーンだけ、見せました。みたいな。  本編、有料チャンネルかよ!  しいなTV契約す…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ