【ショートショート】君はちょっとエロすぎると言われてしまった件
「君はねえ……、ちょっとねえ……」
パリッとしたスーツ姿のオッサンが、困ったようにハゲ頭を撫でながら、言った。
「なんというか……、エロすぎるんだよねえ」
「エロすぎる?」
私は背筋を伸ばし、思わず口ごたえしてしまった。
「女性ならそれは確かに問題かもしれませんが、男なら何ら問題ないのでは?」
確かに私は学生時代から女子たちに『神谷くん、エロぉい』とか『神谷くんは立ってるだけでエロい人だよね』と言われてきた。
そのことが大学新卒の面接で問題となるなんて、思ってもみなかったことだ。
「とりあえず……」
面接官に言われた。
「その流し目はなんとかならないんですか?」
「これは私の目です」
私は答えた。
「生まれ持ったものはどうしようもありません」
「あと、そのくちびる」
面接官が指さした。
「いかにも食べること以外にこそ向いてそうな、つややかで、柔らかい肉を嬲るのが上手そうな……。あっ、左下にあるホクロもです」
「整形しろと仰るんですか?」
だんだんムカついてきた。
「くちびるのエロさが仕事と何の関係が?」
「何よりその体型と、姿勢です」
面接官の顔が赤くなってきた。
「どうしたらそんな細身で肉食獣みたいな動きが表現できるんですか」
「私は座っているだけです」
もうこの会社やめようと務める前から決心していた。
「スーツも青山で購入したふつうのスーツを着ております! 自然に醸し出されてしまうエロさを自分ではどうすることも出来ません!」
「わかりました」
面接官が諦めたように、履歴書を机に投げ出した。
「採用です」
「ええ!?」
意外すぎた。
「エロくてもよろしいのですか!?」
「エロすぎるのは問題ですが、エロいのはいいことです。入社してから過剰ぶんを削ぎ落としてもらいます」
まさか即時入社が決定するとは思ってなかった。
さっきは入社前からやめようなんて思ってしまったが、採用が決まってしまえばもう離すつもりはなかった。
さて、私の受かった会社の業種はなんでしょう?
最後でクイズにしてんじゃねぇよ(-_-;)




