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第53話 許嫁とおっぱいの話

「………莉音くん、男の方は大きい胸が好きなのですか?」

「ゴホッゴホッ!……は?」


 結愛と花森さんが友達になってから、数日が経過した。結愛も女友達が出来て嬉しかったのか、最近ではさらに明るさが増えてきていた。


 もちろん、いくら結愛の友達とはいえ、花森さんには許嫁のことは口外するのを禁止してもらっている。彼女は結愛と友達になるのが目的だったようなので、関係を隠すことには黙って頷いた。


 花森さんは家庭の事情に踏み込まないように一歩引いてくれているので、俺と結愛からすれば助かると言う他ない。思う所はあるようだが、今は目を瞑ってくれていた。


 そんなこんなで、結愛と放課後にゆったりと過ごすのは随分と久しぶりだったりする。それなのにいきなり胸の話題になれば、そりゃ吹き出しもするだろう。



「い、いきなり何の話だよ」

「今日クラスの男子が教室でそのような話をしていたのが耳に入ってきたので、莉音くんに聞いてみました」


 男が胸に興味を抱くのは、仕方ないことだとは思う。俺だって、決して嫌いというわけではない。


 だが、教室でそんな話をするのは良くない。結愛のような子が、今みたいに俺に尋ねてきてしまう。



「そういうのは女子同士でやってくれよ……」

「女子同士でも話しましたけど、やっぱり男の人の意見を聞いた方が一番早いです」

「俺だって健全な男子高校生だぞ。そんなやつに胸の話なんかするな」

「…………という事は、莉音くんはそういう変な目で私を見てたんですか?」



 結愛は純粋な表情を残したまま、俺と顔を合わせて首を傾げる。何を言っても変に勘違いされる。異性である限り、その壁は簡単には超えられない。

 そもそも俺と結愛は十年来の幼馴染でも、付き合ってラブラブなカップルでもない。


 ある日突然許嫁になり、ひょんなきっかけで友達になった関係だ。そんな間柄の俺に、胸の話は難易度が高すぎた。



「み、見てないです。はい。」

「知ってます。そもそも数ヶ月以上一緒に暮らしていて何も起きない人に、どんな心配をすれば良いのですか」

「ぐっ……、それはごもっともだが……」


 ツンと冷めた目を浮かべ、痛い所を突かれる。

確かにこの手の話は難易度が高いが、おそらく結愛は俺に安全という太鼓判を押していた。だからこそ、特に気にすることもなく話題提供することが出来たのだろう。


 でなければ、防御力の高い結愛が自らそんな話題に触れるはずがない。



「言っとくけど、男なんて皆んな獣だからな」


 結愛の俺への警戒心が薄らと弱まってきているので、忠告がてらに言う。

 実際、自分の欲求に素直じゃない男はいないと思う。


 俺だって必死に我慢したにしろ、最終的にはつい頬には手を伸ばしてしまった。結局、抑え切れないのが欲求というものなので、そこを突かれれば簡単に体は動く。



「それは忠告ですか?それなら知ってますよ。私だって莉音くん以外にはこんな話しません。ただ信用しているから、聞いてみたのです」


 信用している。その一言は、俺の胸の中に大きく響いた。

 嘘偽りのないキラキラとした結愛の瞳を見れば、自分だけ変に意識しているのがバカバカしくなってくる。


 結愛だって、単純な興味本位で聞いただけなのだろう。


 信用されているのが男としてどう見られているのか気になりはするが、今はその事は頭から抜かした。



「…………はぁ、、。男が全員そうなのかは知らんけど、俺はそこまで大きくなくていい。普通くらいが良い」

「なるほど……」


 信用してくれた結愛の思いに応えるべく、俺は質問に答えた。2人きりの空間でそんな話をすれば、何とも居た堪れない気持ちになる。


 それもそのはずで、同い年の女子に胸についての意見を告白するのだ。心拍数が上がってしまうのも無理はないだろう。



「美鈴さんが言ってましたが、普通と答えた人が一番変態だそうです」

「はーい変態ですよー」

「開き直りましたね」

「もういっそ変態と思ってくれた方が、結愛の警戒心も強まるだろ」


 俺はもう変態と思われても良い気がした。それで結愛がきちんと自制を強められるなら、どう思われても構わない。



「もしかして私と距離を置きたいんですか?」

「そういうことじゃなくて、普通に男子にこんな話持ち掛けないだろ」

「ですから信用していると、」

「その辺の警戒心を強く持って欲しいんだよ。俺は結愛との何気ない日常が気に入ってるから」


 俺が結愛に警戒心を強く持って欲しいのは、全てが結愛自身のためではない。少なからず、俺の自制心や理性を抑制する為でもある。


 ここ最近の結愛は、明るい表情も増えてきて、ちょっとずつ普通の女子高生に近付いてきていた。

 どこか悲しい表情をしている時ですら、学校中で噂になるほどの魅力をもつ結愛だ。


 そんな彼女が頬を緩めれば、その破壊力は壮絶と言える。


 俺はその笑みを見る度に、可愛いと、そう感じていた。それでも手を出さずに胸の奥底にしまっているのは、日常生活の心地よさを崩したくないという思いや、未だに過去を引きずっている負の感情が、行動範囲を狭めるからだろう。



「でもそうですか……。莉音くんも少なからず男の子だったんですね」

「れっきとした男だ」


 結愛は俺の瞳を見て言葉を発し、変わらず警戒してない様子を見せた。

 やっぱり胸の話なんてしなければ良かった後悔したのは、その後だった。



「…………私は、もう少し大きくしたいんですけど……」


 ソファに座り今日も隣にいる結愛は、そう言って下を向く。

 その生々しさのある結愛の願望が、俺の脳内では消えることなく流れた。



「は!?」


 頭では処理し切れず、驚いた声を出す他に何も出来なかった。

 俺がそんな不審な声を上げれば、結愛は目を丸くして数秒前を振り返る。



「…………あ、、」


 それだけを口に出し、肌荒れの知らない真っ白な肌は、みるみると赤みを帯びていった。

 瞳はあたふたと行き場を失い、口はポカンと開く。


 自分の発言をしっかりと理解した結愛は、真っ直ぐ伸びた髪を両手で握り、照れて髪を抱え込んだ。



「なぁ、だから言ったろ?そういうのは女子同士でやってくれって」

「…………次からは気をつけます」

「これを機にそうしてくれ」


 いくら俺に太鼓判を押している結愛でも、そんな乙女なプライベートな悩みはバレたくはなかったらしい。


 容姿端麗、頭脳明晰の完璧美少女にも悩みどころはあるんだなとギャップのようなものを感じさせられながらも、同時に他の人は知らないのであろうという優越感、特別感も覚えた。



「…………莉音くんが私に何も反応してくれないから、私は女の子としての自信無くします」

「いや、だって反応したらマズいだろ。色々と」

「莉音くんの優しさは十分に伝わりますし、そこに心地良さも感じています。でも、もっと興味を示してくれても……」


 結愛も立派な女の子だ。数ヶ月も一緒に暮らす男から何も思われなければ、少しはムッとなる所もあるのかもしれない。

 それは性的な意味ではなく、可愛いと思われたい女の子の本来の気持ちだろう。


 だからこそ、異性として距離を置くのではなく、異性だからこそ出来るやり取りをしようと、俺は結愛の瞳を見れば考えを改めた。



「…………俺だって、口には出さないだけでいつも思ってるよ、、」

「何をです?」

 

 深呼吸をしてから口を開き、結愛に対して思っていることを言う。

 


「…………結愛は可愛い、って。……これだけじゃ駄目か?」


 それを言い終えた後には、自分の体温が凄く上がっているのを肌身で感じた。まだ一月の季節だが、無性にクーラーをつけたくなった。



「…………もう自信取り戻せました」

「早いな」

「お世辞でも何でも、女の子は可愛いと言われたら嬉しいものです」


 俺からの言葉を耳に通した結愛は、満足そうな顔をしていた。




「…………お世辞じゃないから」

「え?」

「だから、俺は別にお世辞を言ったつもりはないから……」



 結愛はお世辞だと思い、それでも満足げな顔をしていたが、俺は嘘を言ったつもりは一切ない。だから、その誤解は解いておきたかった。




「…………はい、ありがとうございます」



 頬はさっきよりも赤みを増し、体温が高くなったからか、結愛の表情はまた緩んだ。




「きょ、今日は早めにご飯食べるか?」

「そうですね、そうしましょう。そうするべきです」



 そう2人で納得してご飯を用意を始めたのは、まだ5時過ぎだった。

ブクマやコメントしてさると創作意欲に繋がりますので、よろしくお願いします!!


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