四国88カ所巡り その4:恐怖体験
2018年8月
【観光に興味がない】
お遍路が始まってから4日目ですか?
僕たちは高知市のど真ん中あたりにいました。
そこで友人が言うんですね。近くの大型公園に坂本龍馬像があるらしいよと。
僕は観光にまったく興味のない人間なんですが、友人は一般レベルのモチベーションはあるんですね。
せっかくだから見に寄ろうぜと言われました。
↑桂浜公園の坂本龍馬像
これがかの有名な龍馬どんかぁ……!
でもよくよく考えるとどんな人なのかは知りませんでした。
それよりも「アイスクリン」というご当地アイスがとっても美味しかったです。
でもグルメレポートできるほどは味について覚えてません。
たしか美味しかったなという感想は覚えています。
暑かったし……。
それから土佐という場所を通り過ぎました。
「ここが土佐犬の街かぁ……」と思いました。
あと芋けんぴで有名なお店も通りかかったので寄りました。
四万十市では四万十川というめちゃくちゃでかい大河が流れてました。
アマゾンみたいと思って。日本ぽくないくらいスケールのでかい川でしたね。
うなぎの名産地らしいです。
【台風の襲来】
ここにきてとうとう雨天に見舞われてしまいます。
長旅にはつきものなので仕方ないですが、原付で全身を雨風に打たれながら進むというのはやはりキツイものがありますね。
身体的にもそうなんですけど、精神面でも結構……。
晴天に比べてやっぱり気分が沈みますし、いつ晴れてくれるのかな、ずっとこの調子だとまずいぞ、という先行きの不安がプレッシャーになるわけですよ。
そんな中、友人の着込んだ雨合羽が僕のツボに刺さりました。
この旅のために準備したというおニューの深緑ポンチョ。
その独特すぎる佇まいに、僕は緑の妖怪と呼んでひとしきり笑いました。
笑った後に気を取り直して、僕を先頭にバイク走らせ始めたんです。
しばらく集中して走ってるとそんなやり取りがあったこともすぐ忘れちゃうんですね。
忘れた頃合いに何気なくサイドミラーで後方確認すると、映っているわけですよ。
深緑の妖怪が。僕の背後に。
ついてきてるんですね。
え!? なにアレ? って思わず2度見して、ああ、アイツかと思い直すんですけど(笑)
心臓に悪かったですね。
どうやらこの時に九州から台風が上陸してたらしくてですね。
四国は直撃じゃなかったので暴風雨は体験せずに済んだのですが、この影響で降ったり降らなかったりの日が続きました。
僕らのルートではそこまでひどい目には遭いませんでしたが、途中通ろうとした山道で土砂崩れが起きていた模様……。
うひょー……!
迂回しました。
【普通に怖い話】
高知県の南端でしょうか、足摺岬という僻地にあるお寺を訪ねました。40番目くらいのお寺でした。
そこの向かいにちょうど良く定食屋さんがあったので、お昼には早い時間でしたが入りました。
するとですね、テーブルに腰かけた僕ら2人に対して、お冷が3つ出されたんですよ……。
ぞお、っとしましてね……。
無言で顔を見合わせるわけですよ。
なぜ3つ……?
もしかして、見えない3人目がここにいる?
幽霊がついてきてるのかなって、静かに騒然としました。
憑かれたとしたなら、それはどこで?
必死に思い返しました。
そしたらですね、思い当たる節がありすぎるんですね(泣)
お寺の境内でかまし続けてきた不謹慎発言の数々。
この世のものでない方たちがブチギレて追ってきてもまったくおかしくないですからね。
お盆という時期も時期ですし……。
僕ら2人、しゅんとしちゃいましてね。
一応店員さんにも聞いてみたんです。勇気出して。
「どうして、お冷3つ出してもらったんでしょうか……?」
店員さんは、3人に見えちゃって、勘違いしちゃいましたと笑って謝ってくれたんですけど。
シャレんなんねえなと思いました。
※その後無事に生きて帰れました。見逃してくれてありがとうございました。
【機器類のトラブル続発!】
悪天ということもあり移動スピードが目に見えて低下して、それからはビジホに2連泊しつつジリジリと行程を進めていました。
その手前にテント泊を続けてたこともあったので、ちょうど良いスタミナ回復になったと思います。
というのも、やっぱりキャンプは楽しいけど十分に体を休められるわけではないんです。
布団の上で眠るのとは翌日のパフォーマンスに雲泥の差が出ますからね。
ようやく88カ所の半分地点というところで疲労の蓄積が見えてたので、雨に合わせて休養を取れたのは良かったですね。
そんなこんなで体の調子を整えつつ愛媛県へ入ろうとしていた矢先でした。
僕がスマホを落としました。
走行中に、原付から落ちました。
割れました。
液晶画面がバッキバキ。
かろうじて操作は利き、中身も無事だったのは不幸中の幸いでしたが……。
でも実は僕、かなり序盤の徳島県でも一度スマホ落としてたんですよね。
走行中に。原付からですね。
原因は短パンのポケットに入れっぱなしにしてたからなんですけれど。
そのときは割れたりしなかったんですが、友達に注意されました。
ポケットに入れとくなんて危ないだろと。
それに対して僕、割れなかったからセーフじゃんw 余裕余裕w って言い返してたんですね。
むしろ最近のiPhoneは走行中に原付から落としたくらいじゃ割れないようにできてんだよと。
iPhone舐めんなよと叱咤切ってたんです。
それがまあ、こうなってしまったんで、友人も呆れ交じりで咎めてきたんです。
だから言ったじゃんって。
それに対して僕、キレちゃいましてね。
「なんでこうなる前に止めてくれなかったの!」
「いや言っただろ!」
「もっと本気で止めてくれてれば! こんな悲劇は起きなかったのに! すべてお前の責任だ!」
などと無理くりな主張で修理費をせしめようとしましたが、普通に一蹴されました。
そんなトラブルがあって一息ついたあとに、次は友人の原付がイカれました。
バイクを止めてしばらく休憩して、さあ出発するかというタイミングで、いくら頑張ってもエンジンが掛からない。
ちなみに友人のスクーターは中古品で、購入当時からスタータースイッチが接触不良で使えず、キックスターターの方で始動してました。
前々から不調気味だったのですが、いくら蹴ってもブルブル鳴るだけで一向に掛かる気配がありません。
焦りつつ10分くらい格闘したでしょうか。
僕が言ったんです。もう逝ってしまったんだよ。諦めて楽にしてあげようって。
でも友人はそれを頑なに認めず、「こいつはまだ生きてる!」の一点張り。
まるで心臓マッサージのごとく、何度も車体を揺らしながらペダルをキックし続けました……。
挙句に「いくらかタイヤを転がしてからだと掛かりやすくなる」みたいな迷信じみたことを言いだし、原付を手押しでグルグル走らせてはまたキックを試し。
手動で走らせることでエンジン自身にまだ生きてると錯覚させるってことでしょうか?
ヤバすぎ……。
ところが、その異常じみた執念が通じたのでしょうか。
奇跡的にエンジンが掛かったのです。
「ほらなあ。まだ死なれちゃあ困るんだよ」
なんてニタリと悪徳顔で言ってましたね。
その後も懲りずに度々エンジントラブルを繰り返しましたが、その都度むりやりに蘇生させました。
いつしか僕らはその行為を「死体蹴り」と呼ぶようになりました。
~つづく~