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「いなくなったのは、ももさんとくまちゃんだけですか?」
アンノウンはぽかんとした表情を浮かべたが、我に返って言った。
「そうですね。ポンチさんの言う通りです」
二人で自分たちの部屋以外の部屋を、一番から順番に呼び鈴を押した。
最初に反応があったのは四号室だった。出てきたのはノーレッジだ。
「二人ともどうしたんですか?」
「ももさんとくまちゃんがいなくなった」
アンノウンの言葉にノーレッジは一瞬、えっ、といった顔を見せたが、やがて言った。
「そういえば毎日のように会っていたももさん、最近見かけないですね」
アンノウンが言った。
「それで他にもいなくなった人がいないか、確認してるんです」
「そうですか。それは大きな問題ですね。わかりました。私も協力しましょう」
そして三人で残りの部屋を回ったが、五号室、六号室と反応がなかった。
そして最後の部屋の八号室の呼び鈴を押すと、中から社畜が出てきた。
「三人そろってどうしたんですか?」
「実は……」
三人でこれまでの経過を説明すると、社畜が言った。
「ももさんとくまちゃんがいなくなり、確認のためにすべての部屋を訪ねると、いたのはこの四人だけというわけですね」
「そうです。これからもう一度、四人であとの四人を探しませんか」
アンノウンががそう言うと、みなが承諾した。
結果から言えば、屋敷の中にも外にも四人の姿はなかった。
「ほんと、みんなどこに行ってしまったんだ」
アンノウンのつぶやきに社畜が答えた。
「もしかすると、例のでかいやつにやられたのかもしれません」
「例のでかいやつ。なんですか、それ?」
ノーレッジが聞いてきた。
その反応からすると、どうやらノーレッジだけがあのなんだかわからないでかいやつを見ていないようだ。
社畜、アンノウン、そして俺の順番に、ノーレッジに自分の見たものを伝えた。
「そんなものがいたんですか。信じられませんが、三人も見たのなら、それは確かにいるようですね。得体の知れないなにかが、この島に」
「なにかがいるのは確かです。ですから屋敷の外には出ないほうがいいと思います。それと明日から全員の安否を確認するために、決まった時間に集合しませんか」
アンノウンが提案すると、全員が賛同した。
「それがいいですね」
「そうですね」
「そうしましょう」
話し合い、毎朝九時に食堂に集まることになった。
次の日、四人が全員集まった。
それぞれが自分の思うことを口にしたが、とくにこれといった進展はなく、新しい情報も得られなかった。
次の日の朝、俺が少し遅れて食堂に行こうとすると、なんと正面玄関のバカでかい扉、大型トラックでも楽々入ってこられる観音開きの扉が開いているではないか。
――えっ?
誰がどうやってなんのために開けたのか。
ある種の大きな不安な目で扉を見ながらホールを横切り、食堂に入った。
そこにいたのはノーレッジと社畜だった。
「アンノウンさんは?」
「まだ来ませんが」
「とりあえず待ちましょう」
三人で待った。
随分と長い時間。
それでもアンノウンは姿を現さなかった。
「どうしたんでしょう」
「探しましょう」




