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アンノウンが呼び鈴を押した。
反応がない。
しばらくしてもう一度押したが、やはり反応がなかった。
「探してみますか」
アンノウンに従い、二人で屋敷の隅から隅まで探した。
しかしももはどこにもいなかった。
屋敷の周りも見てみたが、影も形もない。
屋敷の戻るとアンノウンが言った。
「女の人だし、そんな遠出するとは思えないんですが。どこに行ったんでしょうね」
そんなこと聞かれても、俺にもわからない。
黙っているとアンノウンが言った。
「心配だ。ポンチさん、なんかわかりましたら必ず教えてくださいね」
「わかりました」
「私は一旦部屋に戻ります」
「そうですか」
「それではまた」
立ち去るアンノウンの後ろ姿は、どことなく寂しげに見えた。
それから数日、ももの姿を見ないままだ。
アンノウンも見てないと言う。
数回部屋を訪ねたが、いなかった。
「ほんと、どこに行ったんだろう。船が来てないから、帰ったとも思えないし」
アンノウンは本当に心配そうだ。
しかし俺にはなにもわからないし、かける言葉が見つからない。
「まさか、例のでかいやつにやられたとか」
その言葉を聞いた時、俺の全身になにかが走った。
言いようのない恐怖だ。
あのでかいなにかが、人を襲わないという保証はどこにもないのだ。
「知らない間に船が来て、帰ったのでは」
俺がそう言うと、アンノウンが反論した。
「知らない間に船が来たとしても、なぜももさんだけ帰ってしまうんですか。だいたいこちらからあっちに連絡する方法はないはずですが」
そう、俺たちはこの島に連れてこられたのだが、自分からツアーの関係者に連絡する方法を持たない。
緊急連絡網なんて存在しない。
ツアーの関係者も俺たちと話がしたいのなら、島にやって来るしかないのだ。
そんな中でもも一人がいつの間にかやって来た船で黙ってかえるなんてありえない。
それはあまりも不自然だ。
「とにかく様子を見てみましょう」
俺はそう言ったが、アンノウンは全く納得していないようだ。
そしてなにかぶつぶつとつぶやきながらその場を後にした。
二日後、俺の部屋の呼び鈴が鳴った。
出るとアンノウンだった。
アンノウンは俺の顔を見るなり言った。
「今度はくまちゃんがいなくなった」
「くまちゃんが?」
「そうくまちゃんとは毎日決めた時間に将棋を指していたんです。それが今日は来ない。だから部屋を訪ねたけどいない。屋敷は一通り探したんですが、やっぱりいない。面倒ですが一緒に探してもらえませんか」
「わかりました」
二人で再びくまちゃんの部屋を訪ねたが、応答はない。
そして屋敷中をくまなく探し、危険を感じながらも外も探せるところは探したが、どこにもいなかった。
「ももさんもくまちゃんも、いったいどこに行ってしまったんだ」
その時、俺の脳裏に恐ろしい考えが。
一瞬迷ったが、思い切ってそれを口にした。




