(9)
「あの、カレンダーおかしくないですか?」
「カレンダー、何処かおかしい?」
「2005年って」
「そうですよ、来年は2006年。ねえ、アンジェリーナそうですよね」
「うん!クリストフくん、何年だと思っていたの?」
「2019年・・・」
「アハハ!それは無いよー」
いや、いや、確かに間違いないはずだ。やはりタイムスリプしてしまったのか。トホホ。と、いうことは4歳の僕は何をしているんだ!?またもや疑問がモクモクと浮かぶ。まあ、いいか。どうせイジメられる人生だったんだから。今を楽しもう。
「アンジェリーナちゃん、ジェンガやろうか?」
「うん、私、何時もお父さんとやるけど負けたことがないの」
「アハハ!手強そうだな」
和気あいあいとしていると、庭からイケメンのおじさんが家に入って来た。金髪の髪がサラサラと額に掛かっている。
「あ、お父さん!」
「何!?お父さん?」
「うん、さっき、釣りしてたの見たでしょ」
近くで見るとこの人もまだ20歳くらいに見える。不思議な島だなあ。
「君が今度、サンタイルさんの手伝いに選ばれた子かな?」
お父さんはにこやかに縁側に腰かける。感じのいい人だ。
「ええ、そうみたいです」
僕は頭を掻きながら答える。あっ、ジェンガが倒れてしまった。木の棒があちこちに散乱する。
「やったあ、私の勝ちだね」
「負けちゃったかー」
僕たちは「アハハ」と笑う。ジョリイが楽しそうに庭を駆け回った。お父さんがクーラーボックス的なものに入れた魚を持ち上げる。鯛かな。それ系の魚だ。赤い鱗をしている。お母さんがエプロンで手を拭きながらやって来て魚を受け取った。
「煮魚、焼き魚、蒸し料理、何でも作りますよ。クリストフくんは何が好き?」
「僕は、煮魚かなあ」
「おっ、いいね!今日はワインが買ってあるんだ。ジョージおじさんからね。煮魚をつまみに飲もう」
ワインなんて飲んだ事ない。当たり前か。僕は高校生なんだから。