(8)
リビングらしきところに行き、カレンダーを見る。やはり12月のページだ。6日までにマルが付いているってことは今日は6日か7日だ。後、もうちょっとでクリスマスか。僕が感慨深くカレンダーを見ていると、ポンっと背中を叩かれた。
「クリストフくん、いらっしゃい。私がね、アンジェリーナの母です」
金髪でブルーの目をした気品のある女性がニッコリ笑っていた。僕はドキドキする。優しそうな目元の顔立ちは、まだ20歳くらいに見える。長い髪を後ろで束ねてあって、花柄のエプロン姿だ。短いスカートからは綺麗な形の太腿とほっそりしたふくらはぎが見えていて毛糸の暖かそうなソックスを履いていた。
「どうも、クリストフです」
「想像していたより、大きな背なんですね。高校生って聞いてたからもっと子供だと思ってました。がっちりしているってことは運動か何かやってたの?」
「あ、一応サッカーをやっていました」
「そう、アンジェリーナはね、運動音痴なの。そのサッカーというものを教えてやってくれませんか?」
サッカーを知らないんだろうか。僕は首を傾げた。
「それくらいなら教えますよ。ボールはあるのかなあ」
「さあ、サンタイルさんだったら知っていると思いますけど。私はあまりこの島の外のことは知らないんです」
「そうですか・・・」
「クリストフくんはもとに居た世界ではサッカー以外に何が趣味だったの?」
今度は僕の方が質問攻めにされた。
「ゲームかなあ、スマートフォンやパソコンでゲームをしてました」
「ゲームならありますよ。ジェンガをアンジェリーナとやって料理が出来るのを待っていてください」
僕はウンと頷いて、またカレンダーを見る。2005年と書いてあった。えっ、ちょっと待てよ14年前?僕が4歳の時のカレンダーを貼っているのか!?それか、もしかしたら場所だけでなく時間もタイムスリップしたのかもしれない。