(6)
「こんなにあるの!?」
「うん、もっと、もっとあるよ。外の倉庫に入っているの。世界中の子供たちの分があるんだもの」
「サンタイルさんは何処?」
「ああ、トナカイが風邪をひいたらしくて看病してるって言ってた」
だから、それはサンタクロースじゃない?僕は苦笑した。アンジェリーナちゃんは目をキラッとさせる。
「サンタクロースはね、ここには住んでないの。あの人はプレゼントを配るだけ。ほんとはね、世界で選ばれた秘密を守れそうな人たちが仕事をしてるんだよ」
えっ、そうだったのか。じゃあ、僕は選ばれた人間なんだな。世界中の子供たちの為に頑張らないといけない。
「子供は好きなんだ。僕に出来ることだったら何でもするよ」
「仕事は明日からね。今夜は歓迎会。パーティーだから歌って踊って騒いでよ」
よーし、歌なんて歌うのは中学校の音楽の時に歌った、ビートルズの曲以来かもしれない。ダンスは林間学校以来だ。あの時くらいからイジメが始まったのを覚えている。女子は僕をきゃあきゃあと避けた。そして何処か遠くへ行きたいと願ったんだ。何処だっけ。夢に見た世界だった気がする。それがここなのか?
嫌なことを思い出してしまって苦虫を噛み潰した顔をしているとアンジェリーナちゃんが僕の手を引っ張って2階に案内してくれた。狭い木でできた階段を上ると部屋が2つあって、右側の部屋が僕の部屋だという。恐る恐るドアを開けて見る。ふかふかに見える布団に、それに反して、ちゃっちい机が置いてあった。でも寝る場所さえ快適なら僕は不満がない。
「中々、いい部屋じゃん」
「そうでしょう。サンタイルさんが男の子は寝る場所が大事だって、一生懸命にアヒルの羽毛を詰めて布団を作ってくれたんだよ」
おお、アヒルの羽毛かー。暖かそうだ。それにしてもサンタイルさんて何でもやるんだなあ。
「何だか悪いね。こんなによくして貰っちゃって」
「アハハ!その代わり、ちゃんと働いてね」
「うん、アハハ!」