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「家族で過ごさなくていいの?」
僕はちょっと心配になって訊いた。
「うん、明日のクリスマス当日は家族で過ごすの。イブはね好きな子と過ごせって、お父さんが・・・」
好きな子!?まさか!ここには僕しかいないぞ。いや、まさかのサンタイルさんっていうこともあり得る。僕は意味なくウンウンと頷いた。
「僕、日本のクリスマスの歌を歌います」
そう言って、明るいクリスマスソングを歌った。そのあと皆で世界中で歌われているクリスマスソングを歌う。
「みんな好きなだけ七面鳥を食べてくださいね。1年に一度だもの」
お母さんが白い皿に料理を取り分けながら言う。
その日の晩、キャウスを貰った。ウサギに近いがもっと小さい。可愛い小動物だ。何故か僕の言っていることが解るらしく、「待て」と言えば大人しく餌を食べるのを待つ。サンタイルさんが言うにはゲージも要らないらしい。僕はキャウスと一緒に寝た。モフモフで心が和んだ。
次の日に目を覚ますとパソコンが消えさっていた。神さまがアニメの代わりに持って行ったんだろう。僕は階段を下りて1階に行き、サンタイルさんと昨日の料理の残りを食べた。
「今日はね、僕からクリスマスプレゼントがあるんです」
僕がそう言うとサンタイルさんはハテナという顔をした。僕はテレビを点ける。僕が小さな時に観たアニメが放送された。
「アニメだ!」
「サンタイルさん、日本のアニメが好きだって言ってたでしょ」
「うん、うん」
サンタイルさんは嬉しそうに笑う。それが僕が貰う一番のクリスマスプレゼントだとつくづく思った。もし誰かに引き取られたとしても、この思い出は大事にしよう。
終わり




