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「今年も無事に役目が終わったよ」
「サンタイルさん、ご苦労さまでした」
「クリストフくんも疲れただろう。まだ、夕方までには時間があるから、部屋で昼寝でもしてればいい」
そうか。パーティーは夜からだ。神さまに言われた動画の続きでも見てみるか。僕は部屋に戻ってパソコンを立ち上げた。16歳の僕がトイレに閉じ込められて声を押し殺して泣いていた。これは高校一年生の頃だ。学校のトイレの作りとイジメる同級生で確信する。後1年分見れば、今の僕と同じ年齢になる。動画の場面が切り替わって僕の部屋になる。僕が遺書を書いている。ああ、そうか。死のうとしてたんだ。思い出した。遺書を書いて死のうとしてマンションの最上階に行ったんだ。そこで金髪のグリーンの瞳をした人に助けられたんだ。
「死ぬな!」
「でも、生きていたって苦しいことだらけなんです」
「僕と一緒に来るかい?」
ああ、あれはサンタイルさんだった。僕は死のうとした時にこの世界に来たんだ。そこだけ記憶が途切れていたので気が付かなかった。少し謎が解けたぞ。僕は布団に突っ伏す。何時の間にか寝てしまった。
家中にオルゴールの音が優しく響く。窓から外を見ると日が傾いていて夕方になったのだと分かった。僕は階段を下りて1階に行く。何故か不思議な感情が沸き上がってきてサンタイルさんに抱きついた。涙がポロポロ零れる。
「どうしたんだい。クリストフくん」
「いえ、少し泣かせてください」
サンタイルさんは背中をトントンと叩いてくれた。僕たちは暫くの間、抱き合った。
その日の6時頃にアンジェリーナちゃんの家に行く。サンタイルさんとお父さんはシャンパンを飲んだ。お母さんも「ちょっとだけ」と言って小さなグラスにピンクのシャンパンを注いでいた。キャロラインちゃんは作りのケーキを持って来てくれた。