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けんちん汁は今まで食べたものより格段に美味しかった。どうやって炊いたのか白いご飯も用意されていた。しかも納豆まで!
「夜はアンジェリーナの家でチキンやらケーキを用意すると言っていたよ。お父さんの釣ったエイダイもあってピザも焼くそうだ」
やった!やった!エイダイ大好き!
朝ご飯を食べ終えて少しすると、玄関の戸を叩く音が聴こえた。
「サンタイル、トナカイを引き取りに来たぞお」
サンタクロースだ!僕はバタバタと狭い廊下を通って玄関に行く。白い髭を生やした白い長い髪の赤い服を着たサンタクロースが立っていた。イメージ通りだ。赤い帽子もちゃんと被っている。
「サンタクロースさん、初めまして」
「んん、君は?」
「新しくクリスマスプレゼントの仕分け作業をしていたクリストフっていいます」
「ああ、聞いているよ。ご苦労だったな」
「あの、今まで僕にもプレゼント配ってくれていたんですね。有難う御座います」
「プレゼントはすべて神からだよ。お礼は神に言ってくれ。ワハハ」
サンタクロースは豪快に笑う。
「トナカイは僕が来た時は風邪をひいていましたが、もう完治しています。みんな健康ですよ」
「そうかあ。それは良かった。ソリに繋ごう。クリストフくんも手伝ってくれないか?」
「ええ、ええ」
僕は玄関から外へ出てトナカイのところに行った。身体が輝いて見える。僕はトナカイの身体を撫でた。触ったところがホワーっと光った。サンタクロースがソリを置く。僕はトナカイの身体とソリを紐で繋いだ。
「さあ、行ってくる」
サンタクロースがそう言うとソリの上にプレゼントが山盛りになった。
シャンシャン、シャンシャン。ソリに付いた鈴の音が鳴り響く。サンタクロースは晴れた空の彼方へ消えて行った。
気が付くとサンタイルさんが横に立って目を細めていた。