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僕は少し気分が良くなった。島全部で流れるのならジョージおじさんも見れるし、キャロラインちゃんのお父さんもお母さんも見られる。会った事はないがとても良い人だと聞いている。その時ドアをノックする音が聴こえた。
「クリストフくん、起きてる?」
「はい、どうぞ、開けていいですよ」
「こんな事を言っていいか迷ってたんだけどね、クリストフくんを引き取りたいって人がいるんだよ。日本の夫婦だ」
「えっ!?」
「クリストフくんも、食事とか風習とか、やはり生まれ育ったところがいいだろう」
そんな、嫌だ。ここにずっと居たいんだ。サンタイルさんとこの大きな家で毎年クリスマスプレゼントの仕分けをして、アンジェリーナちゃんや、アンジェリーナちゃんの綺麗なお母さんとイケメンのお父さんと食事をしたりする生活。それが楽しいんだよ。キャロラインちゃんとの恋心だって芽生えたばかりだ。
「どうした?嬉しくないのかい?」
「僕は嫌です。あの、居たくなくなるまで居てもいんですよね」
「ああ、でもクリストフくんの幸せが最優先なんだよ」
「僕は嫌です、あの、ここに居るのが幸せなんです」
サンタイルさんは困ったような顔をして笑った。
「そう、じゃあ神に言っておこう」
僕たちは階段を下りた。すでにサンタイルさんは起きて朝食の準備をしてくれていたみたいで、鍋に味噌汁が用意されていた。
「味噌汁作ったんですか?」
「ああ、ジョージおじさんから味噌を買ったんだ。日本では毎日飲むんだろう。魔法を使って料理の方法を知ったんだ。けんちん汁っていう物だよ。好きかな?」
「好きです」
僕は感動でウルウルする。
「クリスマスイブだからね、普段は作ってあげられないと思うが、これもプレゼントだ」
「キャウスも貰えるのにすみません」
「あはは!キャウスは今夜、12時に渡すよ」




