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この日の夜は魚だった。アンジェリーナちゃんのお父さんが釣って来てくれたものだ。ヒラメのような見た目をしていたが、何っていう魚なんだろうと思ってサンタイルさんに訊くと「王様カレイだよ」と教えてくれた。王様カレイなんて種類の魚がいるんだ!僕は感心する。
「クリスマスプレゼントの仕分け作業が終われば暫く暇になるからお父さんのに釣りに連れてって貰えばいいよ。王様カレイは船で釣らなくてはいけないんだ」
そうなんだ。僕は防波堤での釣りしか連れて行って貰ってない。船で釣りかあ。行ってみたいなあ。
「この島は毎日が楽しいですね」
日本でイジメられていた時が嘘のようだ。何だか逆にイジメられていて良かった。ここに来れた嬉しさが半端ない。
「クリストフくんはここに来た時の記憶はあるのか?」
「いいえ、気が付いた時にはこの島にいて、その前の記憶は朧気なんです」
「そうか。いや、気になってね、いきなり変なことを訊いてゴメンな」
「いいえ、気にしないでください」
「さ、今年の仕事は今日までだ。明日はキャウスをあげよう。とても可愛いぞ」
明日が楽しみ!僕は心が躍る。王様カレイを食べながらサンタイルさんと雑談を交わす。王様カレイも白身の魚でホクホクと美味しかった。
外は相変わらず雪が降り続いていて、もみの木の上に白い雪が積もっている。街はクリスマスのイルミネーションが輝いていて、雪を赤、青、黄色に照らし出す。このセントジョーンズ島はみんなの家が暖炉らしく煙突がある。そこからサンタクロースが入るのだと思うが煙突のない場所は如何してるんだろう。
「サンタイルさん、サンタクロースって何処の家も煙突からプレゼントを渡しに行くんですか?」
「アハハ、そんなことをしてたら配りきれないよ。街の上からソリで撒くんだ」
そうだったんだ!確かにそうだよなあ。一晩で世界中配り切るのは大変だ。
「今日は明日に備えて早く寝るんだぞ」
えっ、明日は仕事が無いはず。
「明日も仕事、あるんですか?」
「いいや、パーティーとサンタロースが来るからな」
そうか。よし、今日は11時には寝よう。僕はサンタイルさんが作ってくれた羽毛布団に潜り込んでスヤスヤ寝た。