(45)
「クリストフくん、泣いてるの?」
アンジェリーナちゃんが心配そうな顔をする。
「あっ、いや。埃が目に入ったんだよ」
僕は照れたように頭を掻いた。
キャロラインちゃんは夕方遅くなってやって来た。部活があったのだと教えてくれた。高校に部活があるのに、何故みんなサッカーを知らないんだろう。
「キャロラインちゃんは何部なの?」
「私はね、魔法でボールを投げる練習してるの」
「えっ、魔法?」
そういえばサンタイルさんもアンジェリーナちゃんのお母さんも魔法が使えると言っていた。
「うん、でも高校生が魔法を使っていいのは夜中だけ。だから、呪文とか、薬草とか作ってるの」
「じゃあ、僕も覚えたら使えるのかな」
「さあ、今度、神に訊いてみてあげる。それともクリストフくんが訊く?」
僕は肩を竦めて掌を上にあげて外人のようなポーズをする。神さまとはまだ会ったことがない。もし会えたら教えて貰いたいことがいっぱいある。特にパソコンで僕の小さい時の動画が見えるのは何故なのだろう。それに過去に飛ばされたのはどういう意味を持つのだろう。
「みんな、ここに居るのには訳があるのかな」
僕はポツリと呟く。
「みんな訳があるんだよ」
アンジェリーナちゃんが言う。
「僕がここに居るのは何で?」
「それは言えない」
「えっ、知ってるの?」
「何となくだけどね」
アンジェリーナちゃんは意味ありげな顔をしてキャロラインちゃんを見た。僕もキャロラインちゃんを見ると眉毛を下げて困った顔をしていた。サンタイルさんが割って中に入る。
「さあ、さあ、子供たち、お喋りばかりしていると仕事が溜まってしまうよ」
そうだ。本来の仕事を忘れたらいけない。
夜はサンタイルさんがエビパンっていう物を作ってくれた。エビパンなんて初めて聞くので臆して口にちょっとづつはこんだが、エビの練り込んである、ピザっぽいパンでとても美味しかった。