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夢の国(クリスマスランド)  作者: 内藤理恵
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(44)

 お昼はブロッコリーのサラダと約束通りボロネーゼを食べる。午後はまた仕事の続きだ。夕方になってジョリイが「ワン、ワン」と鳴く声が聞えた。外に居るのかと思って玄関の戸を開ける。ジョリイとアンジェリーナちゃんがいた。

「クリストフくん、仕事は如何?」

「楽しいよ、今日はね、近所の女の子のプレゼントがあったんだ」

「家が懐かしい?」

「まさかあ、ずっと、ここに居たいよ」

 僕は二カっと笑う。

「今日はキャロラインちゃんも帰りにここに寄るって言ってたよ」

 あの人形みたいに可愛い子が来てくれるなんて喜ばしい。虐待経験があるのは驚きだが、キャロラインちゃんには暗い影を感じない。苦しみを覆い隠して笑顔を作れるほど、このセントジョーンズ島は明るい街なのだろうか。

「キャロラインちゃんは誰と住んでるの?」

 僕は訊いてみた。でも、踏み込み過ぎかなと言ってみてから後悔した。僕の口は不躾だ。

「お父さんとお母さんと住んでるよ」

 そうか。良かった。誰かに引き取られているんだ。サンタイルさんやアンジェリーナちゃんのお父さんやお母さんみたいに、良い人だったらいいな。

「キャロラインちゃんが来るまでここに居る?」

 僕は首を傾げて言った。

「うん、クリスマスプレゼントの仕分けを手伝うよ」

「子供にそれをさせたら悪いよ」

「ぶうー」

 アンジェリーナちゃんは頬を膨らます。あまりに可愛くて笑ってしまった。でも、何故か目の端には涙が滲んだ。楽しい街と悲しい街、それがこのセントジョーンズ島のような気がする。ポタっと涙が落ちる。こんなに感傷的になったのは久しぶりだ。


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