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「今日もねトナカイの散歩をするよ」
サンタイルさんがニッコリ笑う。
「毎日してるんですか?」
「ああ、クリスマスに運動するだろう。今から鍛えてあげないとだからね」
と、いうことは外の小屋にいるトナカイたちがサンタクロースを引っ張るのかな。
「大変ですね」
「そうだね、でも子供たちの為だと思えば、ちっとも辛くないと思うよ、クリスマス近くになるとトナカイの目が生き生きするんだ」
おお!そうなんだ!みんなのクリスマス。楽しいクリスマス。早くやって来ないかな。
「クリスマスはサンタイルさんは如何やって過ごすんですか?」
「僕はね、イブの前日までに仕事を終わらせて、アンジェリーナたちとパーティーをして過ごすようにしている。今年はクリストフくんも参加してくれよ」
「はい!勿論!」
パーティーか。七面鳥、ケーキ、みんなで食べるのかな。何年ぶりだろう。
「今年はキャロラインも呼ぼうか。クリストフくんは同じ年の子がいた方がいいだろう。ねっ」
キャロラインちゃんも呼んでくれるんだ。他にこの島に高校2年生の子はいないのかな。僕は首を傾げる。
「キャロラインはね、親から虐待を受けてたんだ。小さな頃、このセントジョーンズ島に来たんだよ」
サンタイルさんが言う。えっ。虐待?あんな可愛い子なのに。
「僕はそんなことをする親って分からないです」
「ああ、僕もだよ」
しんみりしてしまう。
「可愛そうですね」
「うん、だから仲良くしてあげてくれないかなあ」
僕は「はい」と返事をした。この島はサンタイルさんといい事情があってくる人ばかりなんだな。ということはアンジェリーナちゃんたち家族も何かあるのかな。
「みんな明るいから分からないですね」
僕は視線を自分の膝に落とす。
「この島は楽しいからね、そうだ!今日もジョージおじさんが食料を売るに来るよ。また買っておいてくれないかなあ」
サンタイルさんが僕が落ち込んでいるのを分かってくれたのか窺うように言った。




