(38)
夕ご飯が終って、片づけを2人でやる。キッチンはお湯が出ないので水がとても冷たい。僕が洗ってサンタイルさんは食器を拭く係だ。こういうのも何だか楽しい。
ここは一応テレビがある。僕はここに来たてなので、じっくり観たことはないが、サンタイルさんはたまにニュースなんかを観ている。テレビも日本語だ。神さまに感謝しなければいけない。
「今夜はね、お笑いのコンテストがあるんだよ」
「えっ、日本みたい」
「アハハ!日本にもあるのか」
「はい。夜はクイズ番組とかお笑いが多いです」
「一緒に観てから勉強しようか。その方がいいだろう」
サンタイルさんは固いソファーに腰かける。背もたれの上に腕を乗せて伸ばす。僕がサンタイルさんの横に座ると肩を組まれたようになった。家族でもこんなに接近はしないな。しみじみ思う。弟とは中学生にあがってから接近したことはない。僕が嫌っているわけじゃなくて弟が避けていた。思春期だからというわけでは無かったと思う。お父さんやお母さんとは普通に接していたのだから。
「何か問題がある?」
僕が眉間を寄せて難しい顔をしているとサンタイルさんが心配してくれた。
「えっ、いや。日本のことを考えていたんです」
「帰りたくなっちゃったかな?」
「いえ、その逆です」
僕は手と手をギュッと握った。
お笑い番組はとても面白かった。2時間のスペシャル番組で日本でいうドッキリみたいなことをやっていた。お腹から笑って肩を揺らす。サンタイルさんも大声で笑っていた。番組が終わると勉強だ。僕たちは2階に上る。