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「この島は医者が少ないからね、冷えて病気になったら困るんだよ」
う、ん。アンジェリーナちゃんも風邪のことを気にしていた。医者が少ないのか。っていうか神さまの君臨している、このセントジョーンズ島にも医者がいるんだ。
「ここにも病気があるんですね」
「ああ、重い病気だと死ぬこともある。ここは年をとって死ぬ老衰がないからね」
そうか!そうなんだ。確かに年をとらない島だからなあ。風邪に気を付けよう。神さまにも出来ないことがあるんだなあ。そうだ。神さまと言えば。
「そういえば魚、食べられない分は釣ったらいけないんですよね。海の神が怒るとか」
「うん、まあ、アンジェリーナのお父さんが付いているから大丈夫だよ」
気が付くと7時近くなっていた。玄関に座ってお父さんが来るのを待つ。この家の中はオルゴールの音が鳴っているが、外は静かだろう。雪の日に出掛けるのは久しぶりだ。東京はあまり雪が積もらない。積もったら積もったで喜んでばかりはいられず交通網はすぐに麻痺をしてしまう。
「ソリがあるけど、これくらいの雪では必要ないな」
横に座るサンタイルさんが言う。
「えっ!?ソリ?」
「うん、トナカイが引いてくれるんだよ」
おお!凄い、凄い。サンタクロースの世界みたい。
「僕、今度、乗ってみたいです」
「いいよ、クリスマスの夜はね、空を飛ぶことも出来るんだ。神が力を貸してくれる」
神さま、有難う!僕ここに来て幸せだ。




