(33)
食べ終わって窓から外を見ると雪がハラハラ舞い落ちていた。石ころが転がっていた庭にも5センチくらいか降り積もっている。
「寒そうですね」
「ああ、風邪ひくなよ」
サンタイルさんは僕の後ろに立って窓から外を見る。こんなに至近距離はヤバい。いいや、僕は間違ってもビーエルじゃないのだけど・・・な。けれどサンタイルさんの息遣いが聴こえてきそうでドキドキしているとスマートフォンがテーブルの上で振動した。この前、電話があった時に登録しておいたアンジェリーナちゃんからだ。僕は電話に出る。
「はい、アンジェリーナちゃん、どうしたの?」
「ああ、クリストフくん、お父さんが私にね、電話しろって言ったの」
もしかして雪が降ってるから中止だという電話だろうか。
「お父さんが?いったい、なあに?」
「7時にね、迎えにいくから温かい恰好をしてくれだって」
良かった。中止じゃないみたいだ。
「りょーかーい。サンタイルさんが防寒着を貸してくれるって」
「私は学校があるから帰りに海に寄るね」
そうか。みんな学校か。僕の勉強はサンタイルさんが教えてくれるらしいから今夜からかな。
「魚が釣れたらあげるよ」
「そんなに簡単にいかないって!そうだ、キャロラインちゃんも呼ぼうか?」
「えっ!?」
「キャロラインちゃんに連絡して言っておくね」
え、えええ!緊張しちゃうじゃないか。でも、ちょっとワクワクだ。
サンタイルさんが貸してくれた防寒着は雪国で着るようなナイロンの素材に裏がボアになっている紺色のものだった。着てみると見た目よりずっと温かくて暖炉のついた室内では汗がじんわりした。




